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第67回中国文化賞 受賞者の業績と横顔

 学術・文化・地域貢献の分野で優れた功績を挙げた中国地方の人たちをたたえる「第67回中国文化賞」(中国新聞社主催)の受賞者7人が決まった。うち、在外被爆者の健康診断に尽力した広島県医師会長で核戦争防止国際医師会議(IPPNW)日本支部長を務める被爆医師、碓井静照さん(73)の業績と横顔を紹介する。

在外被爆者の健診に尽力 碓井静照氏

■記者 平井敦子

 「被爆者はどこにいても被爆者」。いつも、この言葉をかみしめる。ヒロシマの医師として、海外で暮らす被爆者を長年支えてきた。

 広島県医師会は1977年から17回、被爆者健診などのため、北米に医師団を派遣した。南米へは1985年から15回を数える。日本語、とりわけ広島弁での健康相談を心待ちにする被爆者のために、自身も2004年の会長就任後、現地を計6回訪れた。

 国交のない北朝鮮での被爆者健診が、現在の課題。2008年に平壌で会った被爆者は、めまいや貧血のつらさを日本語で話してくれた。「広島の被爆者と一緒だ」とあらためて実感した。

 自身も8歳で被爆した。その生き地獄の体験が、命を守る医師を志す動機となった。核戦争防止国際医師会議(IPPNW)の活動にも20年以上かかわり、あまたの命を一瞬で奪い、人体も地球も汚染する核兵器の非人道性を、世界各地で訴えてきた。

 「私たちには核兵器廃絶を発信する役割がある」。その使命感から、ブラジル・サンパウロ州のパウリスタ医師会と姉妹縁組を結び、今年8月には現地で原爆展を開いた。

 一進一退が続く世界の核情勢に焦燥感も募る。2012年のIPPNWの第20回世界大会を広島に誘致した。被爆地で1989年以来2回目の開催となる。

 「今こそ世界の医療人に、ヒロシマの悲惨さをあらためて感じてもらいたい。それを必ず、次世代に伝えてほしい」

うすい・しずてる氏
 広島市東区生まれ▽1963年、広島大医学部卒▽1998年、広島市医師会長、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)日本支部副支部長▽2003~05年、厚生労働省疾病・障害認定審査会原子爆弾被爆者医療分科会委員▽2004年、広島県医師会長、IPPNW日本支部長

(2010年11月3日朝刊掲載)

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