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悲惨な歴史を胸に 戦没者追悼式 中国地方から350人参列

 終戦の日の15日、東京都千代田区の日本武道館であった全国戦没者追悼式に、中国地方から遺族350人が参列した。集団的自衛権の行使容認が閣議決定され、平和憲法は揺らぐ。参列者は冥福を祈るとともに、平和な世界を後世に引き継ぐ決意を新たにした。(山本和明、坂田茂)

 広島県代表で献花した横山昌夫さん(76)=安芸太田町=は、沖縄に向かう船が沈められ、父数夫さんを失った。近所の農家の手伝いをしながら、きょうだい5人を育てた母の苦労を見てきた。「戦争は人生を変えてしまう」

 集団的自衛権の行使容認をめぐる最近の政府の動きに納得のいかない思いもある。「戦闘に参加するよう米国に求められたら、断ることができるのか。戦争の準備をすることはない」とくぎを刺した。

 岡山県代表の那須慶江さん(88)=備前市=は兄の直正さん、和一さん、一正さんを失った。6人のうち3人のわが子を亡くした両親は戦争の話を一切しなかった。「家族を悲しませる戦争を決して繰り返してはいけない」と誓った。

 原爆死没者遺族代表の下土井賢治さん(72)=広島市西区=は爆心地から1・5キロの自宅で被爆し、生後3カ月の妹の中尾里美さんを亡くした。「わずかな命だった。安らかに眠ってほしい」。フィリピン・ルソン島で父久則さんを失った鳥取県代表の後藤一行さん(82)=日吉津村=は「息を引き取った場所も分からず、遺骨も戻らぬまま。これが戦争だ」と話した。

 「空襲は無差別に子どもの命も奪った」。一般戦災死没者遺族代表の竹内秀男さん(79)=岡山市北区=は、岡山空襲で5歳だった妹の笑美子さんを亡くした。翌年から国民学校に通うのを楽しみにしていた妹の姿を思い起こしていた。

 戦後69年。戦争を知る世代の高齢化は一段と進み、生の記憶は失われつつある。鹿児島県徳之島近くの洋上で父正尾さんを失った島根県代表の細田美恵子さん(71)=松江市=は「戦没者の孫の世代の参列が増えた。平和を願う気持ちを引き継いでほしい」。

 山口県代表の杉村アケミさん(54)=光市=は、北太平洋上で戦死した祖父白井禄三郎さんに思いをはせ、「私たちの世代が平和の大切さを語り継がなければ」。自分ができることを考えていくつもりだ。

(2014年8月16日朝刊掲載)

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