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小中図書館6割が運営見直し 「はだしのゲン」閲覧制限1年の松江市内 本紙調査 本選びに学校が独自基準

 松江市教委による漫画「はだしのゲン」の閲覧制限問題の発覚から、16日で1年。当時、市教委から要請を受けた市内の小中学校のうち6割が、この1年間で図書選定の基準作りなど図書館運営を見直したことが15日、中国新聞のアンケートで分かった。(樋口浩二)

 大半が要請に従った現場で、問題を教訓に図書館の在り方を探る動きが広がったことを示した。一方、全国学校図書館協議会が公表している選書基準をそのまま運用するケースも目立ち、学校の主体性が十分に反映されたとは言い難い。

 図書館を持つ小学33、中学16の計49校に6日、アンケートを発送。各28、16校の計44校(回答率89・8%)から回答を得た。うち61・4%の27校が「図書館運営に関する再検討」を「した」と答えた。

 その手法では、同協議会の基準の再確認や基準に沿った選書の徹底が10校と最多。独自の選書基準作り7校▽選書組織の創設4校▽選書手続きの見直し3校▽選書に関する保護者たち外部意見の反映2校▽その他1校―と続いた。

 同協議会の基準は「正しい知識や研究成果が述べられているか」など内容面のほか、表現、構成、造本・印刷の4分野ごとに計40のチェック項目を記す。朝酌小は6月、それらを踏まえ独自の選書基準を定めた。「児童の教育に役立つもの」といった大まかな指針や「戦争や暴力を賛美しない内容」など8項目だ。藤原尚幸校長は「市教委任せでは児童の学びに責任を持てない。主体的な判断のよりどころ」と説明する。

 湖北中は昨年9月、校長や司書教諭、司書たち5人で学校図書館運営協議会を設けた。購入図書の選定などを担う。秦誠司校長は「将来的に独自の選書基準を定めたい。ただ保護者の意見をどう反映させるかなど課題も多い」という。

 市教委によると、昨年8月に独自の選書基準を策定していたのは2校だけだった。日本図書館協会前理事長の塩見昇氏(77)は「図書館の活用に学校が本腰を入れる動きは全国でも先進的」と評価する。同時に「選書基準も万能ではない。どう作るかのプロセスこそ大切で、協議会の基準の転用ではもったいない。先行事例を参考に、他校も議論を深めてほしい」と話している。

はだしのゲン閲覧制限
 広島市中区出身の漫画家中沢啓治さんの代表作「はだしのゲン」をめぐり、松江市教委が2012年12月と13年1月の2度、書架から書庫に収める閉架にするよう市内の49小中学校に要請した。「一部の描写が過激」との理由だった。同年8月16日に発覚。市教委は10日後の26日、「要請手続きに不備があった」として要請を撤回した。

(2014年8月16日朝刊掲載)

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