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社説・コラム

戦争を防ぐ「伝家の宝刀」 集団的自衛権・高村副総裁に聞く 議論は来年尽くされる

 集団的自衛権の行使を可能にする閣議決定から1カ月半。来月初めとみられる内閣改造では、安全保障法制担当相が設けられる方向だ。性急に進む手続きに国民の不信感は強い。急ぐ理由や今後の展開などを、与党協議を主導した高村正彦自民党副総裁(山口1区)に聞いた。(坂田茂)

 ―内閣支持率が低迷しています。集団的自衛権の行使を容認する解釈改憲で、国民への説明が十分ではなかったことが響いていると思われます。

 解釈改憲は批判のレッテル貼り。法理は変えていないから、あくまで解釈の変更。そこは強調しておきたい。

 なぜ、今かというのは年末に自衛隊と米軍の役割分担を定める日米防衛協力指針(ガイドライン)の協議を始めるからだ。その準備のため、6月末までに政府の考えを示しておく必要があった。ただ、具体的な議論は、関連法案を提出する来年の通常国会からスタートする。提出後に集団的自衛権の行使について大いに議論が尽くされるだろう。

 ―専守防衛の憲法解釈が変更され、かえって戦争に巻き込まれる懸念が高まったのではないでしょうか。

 北朝鮮が核兵器や弾道ミサイルを開発し、中国が軍事費を急増させている。このため、米軍との連携を強化し、抑止力を高める必要がある。日本を攻めれば、必ず米国が攻撃してくると相手国に思わせないといけない。いわば集団的自衛権は伝家の宝刀。戦争で使うためではなく、持つことで戦争を防ぐのが目的だ。

 ただ、国の存立を全うするための必要最小限の自衛の措置しか認められないという、これまでの政府の憲法解釈は堅持している。

 ―安倍晋三首相は、ペルシャ湾での機雷除去活動への参加も可能と説明しますが、与党協議では結論が出ていません。今後、意見の対立が起きませんか。

 武力行使は新3要件を条件にしている。だから、この要件が満たされなければ、機雷除去も邦人輸送中の米輸送艦の防護などもできない。自民、公明両党の間で、安保関連の法案をめぐり食い違いが出るかもしれない。そうなれば、与党協議の場を開いて話し合うことになると思う。

 ―対話外交が日本の安全を守る基本といえます。しかし、中国、韓国との関係は冷え込んだままです。打開策はありますか。

 11月に中国・北京であるアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、安倍首相と習近平国家主席の首脳会談がぜひ実現してほしい。

 どの国の政治家も、他国を悪く言って人気を得ようとするポピュリズムに陥りがちだ。日中韓3国の経済の相互依存は進んでいるのだから、国益を思えば、互いに他国を悪く言うことをまずは自重すべきだろう。

 ―安保担当相に石破茂自民党幹事長や高村副総裁の名前が出ています。

 閣僚選びは、首相の専権事項。できれば、党の側で安保などの政策に携わっていきたい。

武力行使の新3要件
 ①わが国に対する武力攻撃の発生、またはわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合②これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと③必要最小限度の実力を行使すること。3要件を満たす場合に限り武力行使を容認できるとしている。

(2014年8月17日朝刊掲載)

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