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社説・コラム

社説 辺野古の海底調査 着手すれば禍根を残す

 何が何でも強行突破する。そう言わんばかりの日本政府の姿勢は、地元沖縄県民ならずとも納得できるものではあるまい。

 名護市の辺野古沿岸部を埋め立て、新たな米軍の飛行場を造る。その前段となる海底調査がきょうにも始まりそうだ。

 密集した市街地にあって世界一危険だとされる宜野湾市の米軍普天間飛行場の移転先を一刻も早く確保しなければならない。それが辺野古移設を急ぐ日米両政府の大義名分である。

 だが県民の多くはこの県内移設について、沖縄の負担軽減にはつながらないと反対してきた。十分な説明も住民との対話もないままの今回の調査に、批判が渦巻くのは当然だろう。

 しかも11月に予定される沖縄県知事選で、辺野古移設が最大の争点となるのは間違いない。政府は、少なくとも知事選で民意があらためて示されるまでは調査を見合わせるべきだ。

 今回の調査は、埋め立てに向けて海底をボーリングし、地質などを調べるのが目的である。住民が反発を強めるのは、実質的な埋め立て着工となることに加え、日米両政府の性急な姿勢が目立つためであろう。

 というのも、この埋め立て海域をすっぽり覆う形で、6月の日米合同委員会は辺野古の沖合最大約2キロまでを「臨時制限区域」に設定した。

 それまでは岸から50メートルだったのを一気に拡大した。日本政府は、この海域に反対住民が立ち入れば、日米地位協定に伴う刑事特別法の処罰対象として立件する構えを見せる。

 合同委員会は日米両政府の協議機関であり、その合意に沿って工事を進め、基地が完成すれば米軍が自由に使う。もともと委員会は住民の声をくみ取る場ではないものの、今回はむしろ住民の意向を排除する役回りを果たしたといえよう。

 米側の姿勢も理解できない。地元紙の報道によると、沖縄に駐在するアルフレッド・マグルビー米総領事が「沖縄で(基地の)反対運動をする人たちとは意味ある生産的な対話ができない」と発言したという。

 辺野古移設が思うように進まないことへのいら立ちは分かるが、では米側は沖縄県民と誠実に対話していると胸を張れるのだろうか。普天間に隣接する沖縄国際大に米軍ヘリが墜落してこの13日でちょうど10年たった。普天間を辺野古に移したところで、米軍に対する県民の不信感が消えるはずもない。

 記憶に新しいのは防衛省が先頃、普天間に配備されているオスプレイを佐賀空港に暫定的に移す案をいったん示したことだ。知事選をにらんだ沖縄向けの懐柔策とされたが、後に米側との調整不足が明るみにでた。

 今回の調査も知事選に向けた思惑が絡んでいるとの見方がある。すなわち辺野古移設を既成事実化し、選挙の争点からも外してしまう。それが政府の狙いとみられても仕方なかろう。

 その知事選は、辺野古の埋め立て申請を承認した現職の仲井真弘多氏と、元自民党県連幹事長で辺野古反対を掲げる翁長雄志那覇市長、さらに移設の是非を問う県民投票実施を主張する元郵政民営化担当相の下地幹郎氏らの争いとなりそうだ。

 いま調査に着手しても禍根を残す。政府は最低限、知事選での論議を見守るべきだ。

(2014年8月17日朝刊掲載)

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