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カウラの悲劇一冊に 日本人捕虜犠牲の豪収容所脱走 広島経大生、生存者の声を再編集

 第2次大戦中にオーストラリア・カウラ収容所で日本人捕虜が集団脱走を図り、犠牲になった「カウラ事件」から70年。事件を調べている広島経済大(広島市安佐南区)の学生たちが、生存者たちの証言や講演録を本にまとめて発刊した。

 「学生が聞いた カウラ捕虜収容所 日本兵脱走事件」はA5判、158ページ。経済学部の岡本貞雄教授(宗教学)のゼミに2001年度以降所属した学生約120人が携わった。

 同ゼミは、生存者や遺族計10人から聞き取って、04年に証言集をまとめた。捕虜として生活した日々への葛藤、銃撃や自決で死にゆく戦友への思いがつづられている。

 今回発刊した本は、証言集に写真や地図を配して分かりやすく解説し、事実関係を整理。さらに、生存者の一人、立花誠一郎さん(93)=瀬戸内市=と、ことし3月に94歳で亡くなった豪州カウラ会(戦友会)前会長の山田雅美さんの講演録も収めるなど、充実させた。

 編集を担当した4年三浦洋和さん(22)は「事件を起こした兵士は日本の将来を守る気概でいたことを伝え、残さないといけない」と力を込める。

 日本とオーストラリアの戦争史を研究する岡本教授が00年に同会の元会長の浅田四郎さん(02年に82歳で死去)と出会ったのがきっかけ。

 岡本教授と三浦さんたち学生8人は、今月、東区であった同会の慰霊祭に参列。浅田さんの次女慶子さん(63)=西区=に本の完成を報告した。慶子さんは「若者が形にしてくれたことに意義がある」と感謝していた。

 「学生が聞いた―」は1296円。広島市内の主要書店で販売している。(有岡英俊)

カウラ事件
 1944年8月5日、約1100人の日本人捕虜がいたカウラ収容所で、食事用のナイフや野球のバットを武器に脱走。機銃掃射や自殺などで231人が死亡した。オーストラリア兵4人も殉職した。

(2014年8月18日朝刊掲載)

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