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社説・コラム

『備後語録』 子ども未来・愛ネットワーク代表 大塚愛さん

子ども未来・愛ネットワーク代表 大塚愛さん(40)=岡山市北区

 
原発事故を今後に生かす

 「原発事故から学び、変わっていかなければならない」。岡山市を拠点に福島第1原発事故の避難者を支援している。自身も福島県から避難してきた一人。福山市内であった講演で体験を語った。

 福島第1原発から約20キロ離れた福島県川内村で、夫、子ども2人と自然に囲まれて暮らしていた。事故があった2011年3月11日の夜、車に家財を積み込み、岡山市内の実家へ家族で向かった。「原発への不安は前からあった。実際に事故に直面すると、現実を受け止めることができなかった」。5日後の16日、川内村は全村避難になった。

 崩れ去った幸せな日々を思い、涙を流すこともある。放射線の被害について考えるようになった。「放射性物質は見えない、臭わない、味もしない。福島の人たちを無用の被曝(ひばく)から守るため、支援の必要性を感じた」

 11年5月、有志とともに市民団体「子ども未来・愛ネットワーク」を設立した。岡山への避難希望者の相談に乗ったり、孤立を防ぐため避難者同士の交流会を企画したりしてきた。

 夏休みなどを利用し、福島の親子に岡山で保養してもらう取り組みも始めた。参加した女児が浜辺で母親に「ここの砂は触っていいの」と尋ねる姿を見た。子どもたちが外で自由に遊ぶ機会まで事故が奪っていることを実感した。

 今年7月下旬、村内の自宅を訪れた。周囲は雑草が生い茂り、親しい住民は散り散りになっていた。「起こったことは元に戻せない。ただ、次に生かすことはできる。エネルギー問題をはじめ、今後のことを考えてほしい」(渡部公揮)

おおつか・あい
 岡山市中区出身。岡山大教育学部卒業後、岡山市内の障害者作業所に勤務。1999年に福島県内で農業研修を受け、同県川内村に移住した。大工としても働いていた。2児の母親。

(2014年8月19日朝刊掲載)

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