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平和賞サミット詳報(2日目)

 ノーベル平和賞受賞者世界サミットは13日、新たに三つのテーマのセッションで議論を続けた。主な発言と質疑は次の通り。

【第4セッション・核兵器のない世界に向けての進展 現在行われている国際的交渉の成果および都市と市民社会の役割】

■記者 東海右佐衛門直柄

   廃絶に向け、国際政治に市民の声を広く反映させることが重要だ―との意見が目立った。広島市の秋葉忠利市長は、広島をはじめ、アウシュビッツ、ゲルニカなど歴史上の悲劇には都市の名が付いてきたと指摘。「都市が過去の悲しみを共有して連帯すればグローバルな問題も解決できる」と強調した。自身が会長を務める平和市長会議の加盟都市が4300を超え、2020年までの核兵器廃絶を目指していることを伝えた。

 核軍縮・不拡散議員連盟のアラン・ウェア国際コーディネーターは、平和市長会議の活動への支持を表明した。「20年までの廃絶は野心的だが可能だ。被爆地からの訴えは重い」と述べた。  包括的核実験禁止条約(CTBT)機関準備委員会のティボル・トート事務局長は、1996年に国連総会でCTBTが採択されたものの、発効に至っていない現状を報告。「核テロの危険性が増す中、廃絶は保有国にも有効だという認識を広めたい」と力を込めた。

 米国フレンズ奉仕団のシャン・クレティン事務局長は「被爆者の声を世界に伝えることが重要」と語り、米国の地雷禁止活動家ジョディ・ウィリアムズ氏は「戦争は要らないと声を上げましょう。人々が立ち上がれば世界は変わる」と呼び掛けた。

【第5セッション・核兵器使用が与える影響】

■記者 金崎由美

  ヒロシマ・ナガサキの経験に照らし、核兵器が社会、医学、環境などあらゆる面でいかに破壊的で非人道的かを浮かび上がらせた。

 広島県の湯崎英彦知事は、14万人とされる1945年末までの広島の原爆犠牲者について「その1人ずつに人生があった」と思いを巡らせて「核兵器は人類の生存を真っ向から否定するものだ」と力を込めた。

 赤十字国際委員会(ICRC)のリベスキンド総裁顧問は、被爆後間もない広島に入ったICRC職員が送った惨状を伝える電報を引用。「無差別に甚大な被害を及ぼす核兵器は国際人道法上、正当化できない」として「法的拘束力のある禁止条約」の必要性を強く訴えた。

 核戦争防止国際医師会議(IPPNW)のヒルト理事会議長は、医師の立場から、放射線の急性障害とがん発症などの長期的健康リスク、地球環境への影響を懸念した。「核兵器にしがみつき続けるのはあまりに危険だ。保有国から核兵器を引き離すため、禁止条約が必要」と述べた。

 国境なき医師団日本の黒崎伸子代表も人道支援に携わる立場から「沈黙は人を殺す。身近なところから行動を始めよう。それで世界は変わる」と強調した。ダライ・ラマ14世は、初めて広島を訪れた時を振り返り「広島が味わった大きな苦しみから、核兵器廃絶への決意を強めるべきだ。不幸な出来事を前向きな力に変えなければならない」と語り掛けた。

【第6セッション・核兵器が持つ法的、倫理的、経済的意味合い】

■記者 馬上稔子

 核兵器を禁止する法律など国際的な仕組みづくりを提言し、軍備増強による経済的損失への批判が相次いだ。

 南アフリカ共和国のデクラーク元大統領は、米国やロシアなど核兵器保有国が安全保障理事国として、拒否権を持つことなどで国連が保有を禁止できない現状を指摘。各国の相互依存が高まっている国際的枠組みの中で「平和的、商業的に互いが満足する関係づくりを」と提案した。

 イランの人権活動家シリン・エバディ氏は、母国を例に国家予算が国民のためではなく、軍備増強に使われていることを批判。「軍事費に巨額を投じる国には、国際社会が人道支援の資金援助を止めるなど国際的な取り決めが必要だ」と訴えた。

 ダライ・ラマ14世は核兵器解体により、経済的利益が生まれることは明白だと主張。「保有するだけでも巨額の費用がかかる。技術投資などの費用をもっと建設的に使うべきだ」と述べた。

 国連難民高等弁務官事務所のヨハン・セルス駐日代表は、悲劇から立ち直った被爆者の姿を、世界各地の難民の姿と重ね合わせた経験を紹介。国際労働機関(ILO)のモートン・ホヴダ氏は、労働者の権利保護を通じ平和な社会実現を目指す取り組みを報告した。

 会場から「外交の一手段である核兵器に代わる平和的な外交手段はあるのか」との質問が出され、デクラーク氏は「敵同士がテーブルに着き、相手の立場を理解しながら解決策を見つける対話が手段になる」と答えた。

(2010年11月14日朝刊掲載)

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