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体験の伝承者 養成に力

 被爆体験を直接語ることができる人の高齢化が進む中、広島市は被爆者の体験や平和への思いを受け継ぎ、後世に伝える役割を担う「被爆体験者伝承者」の養成事業に力を注いでいる。来年度には3年間の研修を受けた候補生が語り部として、平和記念公園で活動を始める。

 市平和文化センターが委嘱した「被爆体験証言者」の44人のうち26人が講師として協力する。事業は24年度に始まり、2年で162人が受講、10月開講の本年度は44人が応募した。1期生108人は1年目に講義や交流会を重ね、証言者を選んで語る内容を練っている。候補者は全国の20~70代で、被爆者の身内もいる。

 広島大学名誉教授・北川建次さん(79)=広島市佐伯区=は爆心地から1・3キロ離れた国民学校で被爆し、40歳の母と3歳の弟を亡くした。当時の様子を聞いた2期生のマンドリン奏者・佐古季暢子(きょうこ)さん(29)=同市東区=は「思いの重さや傷をえぐるような行為をどう受け止め伝えればいいのか」と悩む。北川さんは「被爆者が減る中、世界が戦争や原爆に無知では困る。伝承者は非常に貴重な存在だ」と語る。

 市原爆被害対策部調査課によると、25年度末で全国の被爆者の平均年齢は79・44歳で、被爆者健康手帳を持つ人は19万2719人いる。広島市は昭和50年の11万4542人をピークに減り続け、25年度末は10年前より35・7%減って6万1666人となった。長野県内は平成2年の244人をピークに、現在134人だ。

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