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核廃絶訴えた父へ祈り 愛知の遺族女性初参列

 平和記念式典には、今年四月に亡くなった愛知県一宮市の加藤裕啓(やすひろ)さん=当時(89)=の次女、成相至子(なりあいのりこ)さん(59)=同県西尾市=が初めて参列した。晩年、自らの被爆体験を語り、核廃絶を訴えてきた加藤さん。娘の至子さんは父の思いを胸に「核も戦争もない世の中を」と誓った。

 加藤さんは原爆投下直後、広島市の金輪島にあった陸軍の船舶工場から救援のため市中心部に入って被爆した。愛知県原水爆被災者の会(愛友会)の副理事長として原爆症認定訴訟の支援に奔走。「とにかく熱心だったが、自身の被爆体験を語ることはあまりなかった」と、愛友会事務局長の水野秋恵(ときえ)さん(73)は振り返る。

 その姿勢に変化が表れたのは二〇一一年の東日本大震災後。自らの被爆体験を一枚の紙にまとめ、原爆の展示会などで配るようになった。生前、本紙の取材に、放射性物質がまき散らされた福島第一原発事故の映像で、被爆に苦しむ戦友を思い出したのがきっかけと明かしている。

 一昨年の平和記念式典では、会場の公園内で子どもたちに「恐ろしい原発も戦争も、絶対だめだよ」と語りかけて手記を配った。だが、昨年秋ごろ肺気腫を患い、闘病の末、四月にこの世を去った。

 愛知県の遺族代表として参列した至子さん。「雨が大勢の人の悲しみの涙のよう。父は『あの地獄を二度と繰り返してはいけない』と話していた。その思いを伝えていきたい」と冥福を祈った。(社会部・中崎裕)

(中日新聞8月6日夕刊社会面掲載)

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