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原爆症認定者への医療手当 更新厳格化で却下急増

 がんや白血病などを患った原爆症認定者に支給する医療特別手当で、更新を希望する被爆者の申請が今年に入り、相次いで却下されていることが分かった。国が更新手続きの審査を厳しくしたことが原因とみられ、広島市や東京都などでは却下件数が昨年の十倍以上に急増。自治体間でばらつきが出ているとして、厚生労働省は対応を検討し始めた。(社会部・中崎裕)

 原爆症の医療特別手当は三年ごとに更新。治療状況の診断書を提出し、認められれば月額約十三万五千円が支給される。更新手続きは毎年五月に各都道府県と広島、長崎両市の窓口で行われるが、厚労省は今年三月、専門家の検討会報告を受けて審査基準を設け、各自治体に通知した。

 通知では、原爆症と認定された病気で継続治療をしているかどうかで更新を判断するよう指示。一部の病気を除いて手術などから原則五年がたった場合は月額約五万円(従来は完治の場合に支給)に減額する方針を示した。

 原爆症認定者が最も多い広島市では、更新対象者千四百三十七人のうち百八十人が更新を却下され、百六十三人も保留状態。同市を除く広島県内では対象者の三割を占める百二十九人の申請が却下された。手当を受け続けるには、ほかの疾病で新たに原爆症認定を申請するか、厚労省に審査請求しなければならず、同県では既に十三人が審査請求した。

 広島県担当者は「通知に基づけば、がんが転移したとしても認定疾病での治療でなければ更新が認められない。通院している被爆者は支給が減り、制度と感覚の隔たりに不安が出る」と指摘。広島県原爆被害者団体協議会の担当者は「手当は生活費の一部で、突然の大幅減に困惑する声が相次いでいる」と話す。

 同様の事態は各地で見られる。百三十八人の対象者がいた東京都では三十二人が却下され、昨年はすべての更新が認められた愛知県でも今年は三十四人のうち六人が対象外だった。

 ただ、六百三十六人が対象だった長崎市の切り下げは十一人のみで、運用によって自治体間で差が生まれているようだ。厚労省担当者は「判断に悩む事例の情報を集め、自治体によってばらつきが出ないよう速やかに対応を検討する」と話している。

(中日新聞8月7日朝刊2面掲載)

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