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社説・コラム

『記者縦横』 海自 頼もしき若手たち

■呉支社・小島正和

 セーラー服の若い隊員たちは桜の季節と比べ、頼もしく見えた。海上自衛隊呉教育隊(呉市)で22日にあった修業式。整った隊列、きびきびとした動作。5カ月間の訓練の成果である。

 ことしが創設60年の自衛隊。年明けから呉・東広島版で海自隊呉地方隊や呉基地の歴史をたどり、今を追い掛けている。隊員の肉声や息遣いにも触れた。

 「海外派遣を命じられたら、まい進するだけ」「人の役に立ちたい。精神と体力を高める」。式当日、20代隊員の表情は明るく、任務への意欲に満ちていた。

 まだ現場経験がないから無理もない。理想に燃え、気負いが目に付く。彼らは式後早々に全国の任地に散らばっていった。ある中堅隊員は「いまからが勝負。部隊に入って見えてくることばかり」。

 自衛隊を取り巻く状況は刻々と変わっている。1991年の湾岸戦争後のペルシャ湾での機雷掃海以降、海自隊の海外実任務は増え続けた。7月1日。くしくも創設60周年を迎えた日に集団的自衛権の行使容認が閣議決定された。関連法の整備を経て将来、戦時下で任務に就く可能性もある。

 災害対応でも自衛隊の存在感は高まる。広島土砂災害では警察や消防とともに陸自隊員が日夜、捜索活動に当たる。避難所の取材で「自衛隊が…」と頼りにする会話をしばしば聞いた。

 多様化する任務とこれから向き合うことになる若い隊員たち。厳しい現実も受け止めながら、成長していくのだろう。

(2014年8月29日朝刊掲載)

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