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データ共有と分析急げ 軍用機の騒音 測定広がる 国・米軍へ対応迫る力に

 米海兵隊岩国基地(岩国市)などの軍用ジェット機の騒音測定を目的に、広島、島根両県内で国や自治体による騒音測定器の設置が進んでいる。空中給油機の訓練本格化と、空母艦載機の岩国移転に備え、近隣の自治体同士が騒音データを共有し分析する仕組みづくりが急がれる。(編集委員・山本浩司)

 岩国基地周辺の恒常の騒音測定は、1975年度に山口県の手で始まった。76年度には岩国市が開始。現在は県4カ所、市5カ所の計9カ所で測定している。

 一方、国による測定は86年度に4カ所で始まった。現在は廿日市市、山口県周防大島町など7市町の20カ所に増えた。70デシベル、5秒以上(滑走路周辺は3秒以上)の騒音を測定し、2005年度から防衛省中国四国防衛局のホームページでデータを公表している。

 だが、新たな動きも出てきた。岩国基地周辺だけでなく、基地から離れた広島、島根両県の自治体が、独自に設置を始めたのだ。

 トップを切ったのは江田島市で、12年9月に1カ所の運用を開始した。同年12月には島根県が9台を県内5市町に無償で貸与。廿日市市、浜田市、広島県北広島町、島根県邑南町でも導入が相次いだ。

 主な目的は、岩国基地を離着陸する際と、訓練空域「エリア567」での飛行に伴う騒音の測定だ。

■目撃情報裏付け

 設置の効果は出ている。廿日市市総務課は「市民からの目撃情報を騒音データで裏付けられるようになった。ことし4月、阿品台市民センターに設置した機械の測定回数が多く、市街地上空を飛行している可能性が見えてきた」という。

 強い要望を受け、国も浜田市と北広島町の計2カ所に増設した。訓練空域下への設置は初めてだった。

 こうした取り組みは、17年ごろとされる米海軍厚木基地(神奈川県)から岩国基地への米空母艦載機移転に向けた備えでもある。艦載機移転前の騒音を測定しておかなくては、移転後の騒音の変化を明確に判定できないからだ。

 しかし、測定だけでは十分とはいえない。そのデータの分析に加え、他の自治体との共有が重要だ。

■近隣の連携必要

 移転する艦載機はプロペラ機を含む59機とされる。移転後は、訓練空域と低空飛行ルート、岩国基地とそれらを結ぶ空路下の騒音が増大するのは間違いない。

 その場合、自治体が一つになって、国や米軍に強く申し入れる必要がでてくる。その際、力となるのは県境を越えて共有・分析された騒音データである。

 島根県から測定器を貸与されている市町は昨年、首長による「米軍機騒音等対策協議会」を設立。「幹事会の場で、各市町の担当者が騒音に関する情報の交換と分析を行っている」(邑南町)という。この取り組みを参考にしたい。

 一方、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の空中給油機KC13015機の岩国基地への移転は今月26日に完了。間もなく飛行訓練が本格化するとみられる。

 プロペラ機である同型機はジェット機ほどの騒音を出さない。「だが、ジェット機を対象にした測定器が感知しない、新たな騒音が発生するのでは」。岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会の坂本千尋事務局長は危惧する。

 関連する各自治体は、空中給油機の飛行と騒音に関する情報交換から始める必要に迫られている。

(2014年8月31日朝刊掲載)

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