×

ニュース

<解説>広島宣言 実行力伴うか

■記者 金崎由美

 ノーベル平和賞受賞者世界サミット最終日の14日に発表された「広島宣言」は核兵器使用の非人道性と、廃絶条約の必要性を強調した。一過性の宣言に終わらせず、廃絶機運を高める役割を果たし続けられるかが問われる。

 宣言は、核兵器禁止条約(NWC)への支持も打ち出した潘基文(バンキムン)国連事務総長の提案や、核兵器の非人道性とNWCに言及した5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の最終文書を反映。廃絶運動を展開する国際的なNGO(非政府組織)と軌を一にした。

 オバマ米大統領の出席は実現しなかったが、逆に米国に配慮せず踏み込んだ内容になった。主催したローマのサミット事務局は今後、広島宣言の「行動委員会」を設け、継続的な取り組みにつなげる考えを示す。

 ただ、「議論の時間が不十分」「一存では決められない」として、国連関係者や国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ前事務局長は宣言に署名しなかったという。行動委が実行力を発揮できるのか懸念される。

 一方、歴代受賞者の多くは核問題の専門家ではない。そのことで核軍拡や核拡散にとどまらず、背景にある紛争、人権問題、貧困について議論することにつながった。今年受賞する獄中の劉暁波氏をめぐり、中国の人権問題も関心事となった。

 当初、サミットの共同議長を務めるベルトローニ前ローマ市長も、劉氏をめぐる人権問題を宣言に盛り込む意向を示していた。

 だが、広島宣言で中国への言及はなかった。参加者によると、中国に関する部分の草稿はできていたが、表に出ることはなかった。閉幕後、南アフリカ共和国のデクラーク元大統領は核兵器廃絶がテーマだからとだけ釈明。不可解さが残った。

(2010年11月16日朝刊掲載)

関連記事
バッジョ氏にサミット賞 日本被団協には特別賞(10年11月17日)
核兵器廃絶条約 実現を 広島宣言 平和賞サミット閉幕 (10年11月16日)

年別アーカイブ