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社説・コラム

『書評』 郷土の本 女性自衛官 艦上で奮闘 時武さん 実体験基に小説

 女性の海上自衛官として呉市で勤務した経験を持つ、時武ぼたん(本名袴田里帆)さん(43)=東京都町田市=が、小説「ウェーブ」=写真=を刊行した。国の防衛を担う自衛艦での日常や艦上の人間模様を、巧みなストーリー展開と臨場感あふれる筆致で描き出している。

 海上自衛隊の練習艦「あやぐも」に着任した女性幹部が主人公。着任早々、幹部の帽子が何者かに捨てられる事件が起きる。その後も、さまざまな困難に巻き込まれるが、周囲の力を借りながら任務をこなしていく。やがて、艦内で起きた事件の背後にある人間関係が浮かび上がってくる。

 主人公の女性自衛官は初任という設定。高度な訓練を受けていても、現場ではほぼ素人。それでも幹部らしく、「デキる女性」として振る舞わなければならない。そんなジレンマも伝わってくる。一方で、「女性自衛官ばかりが特別視されていると、男性からのやっかみもあった」と明かす。そんな体験が、今作の事件の鍵を握っている。

 公募小説を対象とした第4回ゴールデン・エレファント賞の大賞受賞作。424ページ、1296円。枻(えい)出版社。(石井雄一)

(2014年9月7日朝刊掲載)

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