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「遅い」「見切り発車」 川内原発審査書決定 島根2号機の地元住民賛否 中電、進展を期待

 九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の安全対策が新規制基準を満たしているとした、原子力規制委員会による審査書の決定。中国電力島根原発(松江市鹿島町)の地元住民には10日、賛否が交錯した。島根原発2号機の審査は本格化しているが、終了時期は見通せない状況。中電幹部は審査進展に期待を示した。

 「合格したのは良いが、審査に時間がかかり過ぎた印象がある」。まつえ北商工会(松江市)の青山正夫筆頭理事(67)はこう受け止める。「新規制基準に沿った工事で、安全性は相当高まった」と話し、規制委に島根2号機の審査のスピードアップを求めた。

 島根原発・エネルギー問題県民連絡会(同)共同代表の北川泉島根大元学長(83)は「安全性に誰が責任を持つのか曖昧で、避難計画も穴だらけ。見切り発車だ」と指摘した。川内原発の再稼働に向けては地元了解が焦点の一つとなる。今後の住民説明のプロセスについて、北川元学長は「民意を吸い上げる仕組みが整っていない」とし、「漫然と説明会を重ねるだけでは不十分。島根県は真剣に向き合うべきだ」と注文した。

 市民団体「島根原発増設反対運動」(芦原康江代表)は10日、川内原発の審査書を白紙撤回するよう求める申し入れ書を、原子力規制庁島根原子力規制事務所(松江市)に提出した。

 島根2号機の再稼働の是非を判断することになる島根県の溝口善兵衛知事は「国が県にどう関与して再稼働を決めていくのか、具体的な手続きが不明。川内の事例を注視する」。松江市の松浦正敬市長も「鹿児島県と薩摩川内市への国の対応を見ていく」とした。

 中電にとっては、新規制基準を満たす審査書の前例ができたことになる。中電広報部門は「島根2号機の審査に適切に対応し、より一層の安全性向上に向けた取り組みを続ける」とコメントした。

 ある中電幹部は「川内は慎重な審査を経て第1号で合格した。電力業界で考えれば非常に喜ばしい」と歓迎する。島根2号機の審査会合は8月下旬以降、週1回のペースで開かれ、本格化してきた。主な論点となるフィルター付き排気(ベント)設備の審査も始まった。ただ、規制委の指摘で5月に始めた周辺活断層の追加調査は、時間を要している。特に宍道断層(約22キロ)の追加調査は当初予定の8月末で完了できず、9月以降にずれ込んでいる。

(2014年9月11日朝刊掲載)

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