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ブラジル在住の被爆者 4割が病気放置  放影研調査

■記者 森田裕美

 ブラジルに暮らす被爆者の4割が、病気と診断されても治療せず放置している-。放射線影響研究所(広島市南区、放影研)が、在ブラジル被爆者を対象に実施した健康影響調査で、現地で十分な医療を受けていない実態が明らかになった。

 被爆者の生活や医療環境の違いが、健康状態にどう影響するかを調べるのが目的。昨年11月、在ブラジル原爆被爆者協会(森田隆会長)の協力で会員約130人に聞いた。

 喫煙や飲酒量などの生活習慣▽食生活▽健康状態▽病状▽治療の有無-を問い、97人から回答を得た。片山博昭情報技術部長(疫学解析用データベース構築)らが、放影研の成人健康調査の被爆者データなどと比較し、分析した。

 その結果、高血圧を患う被爆者の割合は日本もブラジルも変わらなかったが、治療しているのは日本の70.4%に対し、ブラジルは22.2%。さらに病気と診断されても「放置している」との回答が40%(日本0.2%)に上った。

 必要な医療を受ける上での障害を、選択式で尋ねた項目では、高額な医療費▽被爆者医療への理解不足▽日本語が分かる医師や看護師の不足-との理由が多かった。

 片山情報技術部長は「母数が少なく統計学的な解析はできないが、問題点は把握できた」と説明し、現地での被爆者医療支援に役立てるという。放影研単独の在外被爆者調査は初めて。8日、長崎市であった「原子爆弾後障害研究会」で発表した

(2008年6月10日朝刊掲載)

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