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社説・コラム

社説 野党の役割 臨時国会で存在感示せ

 臨時国会まで、あと1週間。巨大与党の安倍政権に対し、巻き返しを図る野党側の態勢は整ってきたといえるだろうか。

 きのう新党がまたも産声を上げた。二つに分かれた旧日本維新の会のうち橋下徹大阪市長の率いるグループが、みんなの党を飛び出した結いの党と合流した「維新の党」である。衆参53議員の野党第2勢力となる。

 旧維新の会のもう一つの勢力は次世代の党となって旗揚げを終えている。ただ2年前の衆院選や昨年の参院選で二大政党にあきたらず「第三極」に1票を託した有権者からすれば、すんなりとは腹に落ちまい。それぞれの党の立ち位置が、いまひとつ分かりにくいからである。

 野党側が結束し、安倍政権の対立軸をつくる意味は確かに大きい。自民党の「1強時代」が続く一方で、世論調査で4割を占める無党派層の受け皿が求められているからだ。維新の党の共同代表に就いた江田憲司氏は早速、民主党などを巻き込んださらなる野党再編に意欲を示した。しかし具体的な展望はまだ開けていないのが現実だ。

 何より肝心なのは政策のはずである。その点で維新の党が見切り発車となったのも気掛かりだ。道州制導入などを掲げる半面、原発再稼働や消費税増税への対応などで隔たりを調整できていない。この調子で政策のすり合わせを棚上げして再編を進めるとすれば、有権者の信頼をどこまで得られるだろうか。

 同じことは、野党第1党の民主党にもいえるだろう。

 先週の執行部人事では、海江田万里代表と距離のあった枝野幸男元官房長官を幹事長に、岡田克也元代表を代表代行に起用した。挙党一致をそれなりに演出してみせたのだろう。江田氏らが促す野党再編の動きにすぐには応じず、まず自党立て直しを図れとの声が大勢のようだ。

 とはいえ下野の原因となった党内の不協和音は一向に克服できていない。象徴的なのが護憲派から改憲派まで抱え、温度差の際立つ安全保障政策である。おのずと国民の多くが不安視している集団的自衛権の問題での歯切れの悪さに結びつく。

 今月の内閣改造を経てやや沈静化したものの、安倍晋三首相が遠からず衆院解散に踏み切るとの臆測は与党側に消えていない。それというのも野党側の体たらくに「今なら勝てる」と高をくくる空気があるからだ。

 昨年末に分裂したみんなの党に目を移せば安倍政権と連携していくか否かでいまだ内輪もめが続く。野党側が浮足だったままなら臨時国会も政府与党の一方的ペースとなりかねない。

 首相は来年の統一地方選を控え、批判を浴びそうな安全保障関連の法案は上程しない。「地方創生」や「女性活躍」を前面に掲げる構えという。ただ4月の消費税増税や予想を超える円安で、アベノミクスのほころびが広がってきた。原発政策も3・11以前に、なし崩し的に戻ろうとしている。今こそ野党側が国会審議の場でただすべきテーマはいくらでもあるはずだ。

 解散を意識して数合わせに走る前に、それぞれの党が重要政策のスタンスを明らかにしてもらいたい。そして個別の論戦を通じて存在感をアピールすることこそ国民の信頼を取り戻す早道ではないか。その意味でも、臨時国会は正念場である。

(2014年9月22日朝刊掲載)

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