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社説・コラム

トップに聞く 米軍機騒音、住民の不安をどう軽減しますか 廿日市市・真野勝弘市長 

独自の測定器 効果発揮

訓練中止要望 地道に

 廿日市市は、米軍機の低空飛行訓練による騒音被害の実態を把握するため、昨年から市独自の騒音測定器の設置を進める。8月28日には外務省、防衛省を訪れ、低空飛行訓練の中止などを両大臣に要望した。市民の不安や騒音をどう軽減していくのか。真野勝弘市長に聞いた。(桑原正敏)

 ―岸田文雄外相と小野寺五典防衛相(当時)に要望書を手渡し、手応えはどうでしたか。
 騒音測定のデータを踏まえて現状を報告し、米海兵隊岩国基地(岩国市)の訓練飛行の事前通告が廿日市市にないことも伝えた。岸田外相は「騒音は十分に心配する事項で、地元にとって重要な問題」と答え、小野寺防衛相からも住民への配慮が必要との見解を得た。市は現在、今後10年間のまちづくりの方針を示す次期総合計画の策定中で、市民の安心・安全は市政の最重要課題だ。

  ―市民の騒音被害についてどう感じていますか。
 廿日市市は、岩国基地から「エリア567」と「ブラウンルート」の両訓練空域への通り道。市北部で米軍ヘリコプターの騒音が原因の落馬事故があり、けが人が出たこともある。学校や高齢者施設近くの騒音や爆音に住民は不安を募らせている。

  ―市内には国の騒音測定器があります。市独自に測定器を設置した理由は。
 目撃情報の増加や市議会の請願採択を受けて、3カ所に順次設置した。うち吉和では昨年6月に計測した騒音が件数、数値とも突出したため翌月、米軍や国に中止要請をした。測定器は効果を発揮している。国が宮島と対岸の大野地域の2カ所で測定するデータも活用していきたい。

  ―宮島には世界遺産の厳島神社やラムサール条約登録のミヤジマトンボ生息地もあります。
 観光客や環境への影響も懸念している。私自身、宮島の行事に出席したとき、上空を米軍機が飛来し、ごう音でマイクの声がかき消された経験がある。

  ―どのように市民の不安や騒音を軽減しますか。
 2017年ごろまでに米海軍厚木基地(神奈川県)の空母艦載機が岩国基地に移転され、所属機はほぼ倍増する。必然的に訓練の騒音も増える。今春から市職員も市内で目撃情報を集め、計測と併せて実態把握を強めた。低空飛行訓練は墜落も起こりえる。中止を国や米軍に地道に求めていく。

  ―島根県では関係市町が情報交換する協議会を設置しています。
 広島県内でも騒音被害を受けている市町とどう対策を講じていくか、話し合いをしたい。組織的な連携が必要なら、県に調整役を要請したい。

廿日市市の騒音測定器
 市は2013年6月から吉和地域1カ所で、70デシベル以上の航空機騒音の発生時間と数値を計測する。ことし4月には沿岸の阿品台地区、山あいの佐伯地域の各1カ所に増設した。吉和では8月末までに計363回、最大99・5デシベルの騒音を記録。阿品では同97回、佐伯では同100回を計測している。

(2014年9月23日朝刊掲載)

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