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前広島総領事が博士号 韓国の辛亨根さん 民間交流で論文

 3月まで駐広島韓国総領事を務めた辛亨根(シンヒョングン)さん(60)が25日、広島大大学院国際協力研究科(東広島市)博士課程後期を修了し、博士号を取得した。被爆者である父たちが先導した「草の根協力」が、韓国人被爆者の問題の解決の原動力になったとする論文を書き上げた。「日韓の平和のため、引き続き活動したい」と気持ちを新たにしている。

 論文は、韓国人被爆者への日本の被爆者援護法の適用は、民間レベルから始まった連携の成果と指摘。差別や無関心、貧困などから幾重にも苦しんだ被爆者が日本の世論や政府へ直接訴えたことが、「支援組織の結成につながり、政府に法制度や政策の整備を促した」とした。

 いまの冷え込んだ日韓関係の改善の糸口も「草の根協力」にあると強調。「政治、外交が困難でも、民間や地方間の交流は意識的に強化するべきだ」と、青少年交流などを例示している。指導した同大平和科学研究センターの川野徳幸教授は「民間レベルでの交流を、両国間の懸案を解くアプローチ例と論じている点が特徴的」と評する。

 辛さんは2011年3月に総領事に着任、同年10月に入学した。父の故辛泳洙(シンヨンス)氏は、広島で被爆し、韓国原爆被害者協会会長として草の根協力のきっかけになった人物だ。

 25日の修了式では藤原章正研究科長から博士学位記を受け取った。「機会があれば、韓国の大学で若者に日韓の平和問題を伝えたい」と話していた。(新本恭子)

(2014年9月26日朝刊掲載)

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