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社説・コラム

社説 再生エネ買い取り中断 国はなぜ手こまねいた

 福島第1原発事故を機に政府が進めてきた太陽光や風力など再生可能エネルギーの拡大策が曲がり角を迎えている。

 おととし導入された固定価格買い取り制度で再生エネの事業者から電気を購入してきた全国の電力会社が、新たな契約の受け付けを相次ぎ中断している。九州電力が先行し、北海道、東北、四国、沖縄の各電力会社が一斉に後を追った形だ。

 事業者の申し込みが急増し、これ以上の受け入れが難しいという。一方、まだ余地がある中国電力は買い取りを続ける。

 このまま再生エネを失速させてはなるまい。政府は有効な手だてを講じるべきだ。

 電力会社が再生エネを受け入れられないとする技術的な理由はいくつかある。

 一つは、各電力会社の送電網の問題だ。例えば日射量が多い九州電力の管内では、大規模太陽光発電所(メガソーラー)の事業者が相次ぎ参入している。再生エネの接続が増え続ければ、送電可能な容量をオーバーするという。

 もう一つは、電力会社同士をつなぐ「連系線」の問題である。再生エネの導入が進む九州電力などから、大消費地を抱える関西電力や東京電力に電気を送ろうとしても、現在は容量が限られている。

 しかし、いずれも早くから指摘されていた問題だ。今回のような事態が起こることも政府は十分に予測できたはずである。

 小渕優子経済産業相は「それぞれの電力会社で受け入れがどれくらい可能か検証したい」と述べた。本来であれば、すでに政府として当然やっておかなければならなかったことだろう。

 それなのに、なぜ手をこまねいてきたのか。

 疑念を抱くのは、安倍政権が手続きを進める原発再稼働との関係である。再生エネの「限界」を強調し、原発を再稼働しやすい状況をつくろうとしているとの見方もある。

 再生エネが課題を抱えているのは事実だ。一つが電気料金の問題だろう。固定価格買い取り制度では、導入量が増えるにつれ、家庭や企業の負担も増す。

 とりわけ企業からは不満の声が聞かれる。ただ脱原発に向け、ある程度の負担はやむを得ないと考える消費者も多いのではないか。これまで低いとされてきた原発の発電コストも疑わしくなっている。

 今後、経産省は固定価格買い取り制度を抜本的に見直す考えだ。年間の導入量に上限を設けたり、より安い価格を提示した事業者を優先して認定したりすることを検討しているという。

 むろん電気料金を抑制する工夫は必要だろう。だが再生エネの普及を抑える方向性であってはなるまい。

 安倍政権も4月に閣議決定したエネルギー基本計画で、原発の依存度を下げ、再生エネを積極的に導入する方針を明記している。実現するための制度設計が求められよう。

 一連の電力改革では、電力小売事業の完全自由化や、電力会社の発電と送電部門を分ける発送電分離が予定されている。しかし送電網の整備については不透明なままである。

 中長期的な視点に立ち、いかに着実に再生エネを増やしていくのか。政府の本気度が問われていよう。

(2014年10月3日朝刊掲載)

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