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大戦中の悲劇「真実隠せぬ」 映画監督 アンジェイ・ワイダ氏に聞く

 映画「地下水道」「灰とダイヤモンド」で知られるポーランドのアンジェイ・ワイダ監督(88)が10日、ワルシャワで、中国新聞社など共同通信加盟社論説研究会訪問団のインタビューに応じた。第2次大戦中の悲劇を描き、多くの名作を生んだ巨匠は「真実は隠せない」と述べ、旧敵国との和解には、加害側が戦時中の残虐行為などを率直に認める姿勢が重要だと指摘した。 (ワルシャワ発 東海右佐衛門直柄)

 ワイダ監督は親日家としても有名。日本と中国、韓国が歴史認識をめぐり対立する現状について意見を求められ、かつてポーランドに侵攻したドイツを引き合いに出して答えた。

 ナチス・ドイツは1939年9月、ポーランドに突然攻め入り、第2次大戦が始まった。他国からアウシュビッツなどの強制収容所に送られたユダヤ人を含め、ポーランド全土で約600万人が犠牲になったとされる。

 ワイダ監督は大戦中の出来事を「(国の)リーダーは勇気を持って国民に伝えなければならない」と指摘。西ドイツ(当時)のブラント首相が70年、訪問先のワルシャワのゲットー(ユダヤ人隔離居住区)跡でひざまずき、許しを請うたことを挙げ「期待していなかっただけに、うれしかった」と振り返った。

 また「昔のことを記録に残すのはわれわれの義務だ」と強調。記憶の風化を防ぐことが、自身の父を含むポーランド軍将校ら2万人以上がソ連に虐殺された事件を扱った「カティンの森」などを撮影する動機になったと明らかにした。

 ワイダ監督は54年にデビュー。ソ連支配下のポーランドで検閲と戦いながら、権力に抵抗する民衆を描いた作品で世界的に評価が高い。クラクフ国立博物館付属日本美術・技術センターの建設にも尽力した。

(2014年10月12日朝刊掲載)

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