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連載・特集

緑地帯 私とクルドとイラク 玉本英子 <8>

 ジャーナリストの仕事を続けるうち、学校で話す機会も増えてきた。紛争地域で撮影した映像を見せながら、戦争は大人だけでなく、家族、子どもを巻き添えにすることを話すと、低学年の児童でも真剣に聞き入ってくれる。

 5年前、イラクの現状を知った大阪の小学6年生が、イラクの子どもたちと友達になりたい、修学旅行で行った広島で学んだ平和の大切さも共有したい、と言ってきた。イラクの学校に相談すると「ぜひ」と返事をもらった。

 イラク北部アルビルにある小学校の6年生のクラスで平和授業をした。教材は、大阪の6年生が作った原爆についてのパネル。焦土と化した広島の街、背中に大やけどを負った女性の写真などを見せながら、当時の状況や被爆者の思いを説明した。

 子どもたちは次々に手を挙げた。「原爆に遭った人はどんなに苦しかったろう」「戦争は昔も今も変わらない」…。イラク戦争とそれに続く混乱で、ここに逃れてきた子も多い。広島に今のイラクを重ね合わせ、平和への願いを一つにしたようだった。

 その様子を大阪の6年生に伝えると、「気持ちがつながった」と大喜びしていた。ある女の子はこんな感想文を寄せてくれた。「遠い国の人でも、そこに暮らす人を知れば、友だちになれば、そこに爆弾を落とそうとは思わなくなるはず。戦争はなくなる」

 私がこの仕事を始めたのは、20代の後半、あるクルド人を知り、友人になったからだった。続けようと思っている。(ジャーナリスト=大阪府豊能町)=おわり

(2014年9月23日朝刊掲載)

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