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島根1号機「廃炉が濃厚」の見方 

経産相の業界要請に地元 「再稼働では理解得られぬ」

 小渕優子経済産業相が電力業界に、老朽原発を廃炉にするかどうかの判断を急ぐよう要請した17日。運転開始から40年を超えている中国電力島根原発1号機(松江市鹿島町)の地元には「廃炉が濃厚」との見方が広がった。中電は再稼働と廃炉の両面で検討を続ける。(山瀬隆弘、樋口浩二、山本和明)

 原発から約2キロの古浦自治会。亀城幸平会長(64)は「廃炉はやむを得ないとの声が住民に強い。再稼働は難しい」と話した。稼働する場合には地元同意を出す立場にある島根県議会のある自民党県議も「1号機の再稼働は住民の理解を得られない。2、3号機を動かすつもりなら廃炉にするしかない」と漏らす。

 「廃炉を決めても問題が山積み」と指摘するのは松江市の市民団体「平和フォーラムしまね」の杉谷肇代表(72)。「放射性廃棄物をどうやって安全に処理するのか。中電は危険なものを放置せず、早く廃炉作業に移るべきだ」と訴えた。  苅田知英社長が「廃炉の選択肢もある」と表明している中電。この日は「運転延長を申請するかどうかも含めて検討している。要請を踏まえ、さらに検討を進める」とのコメントを出した。

 1号機を再稼働させるには、原子炉圧力容器の劣化を超音波などで調べる特別点検の結果を来年7月までに原子力規制委員会へ提出する必要がある。しかし中電はこの点検に未着手。再稼働には巨額の安全対策が必要で、運転延長で採算が合うかどうかの試算を急いでいる。ある幹部は「点検には半年くらいかかるだろう。年内には経営として判断しないといけないと感じている」と話す。

 島根県防災部の大国羊一部長は「中電から考えは聞いていない。電力会社が決めることであり、動向を見守る」と言う。県と中国経済産業局によると、1号機の立地に伴って県、市に入った昨年度の交付金は計数億円とみられる。廃炉時の減収への対応について、県地域振興部は「まだ議論していない。検討するにしても中電が方針を決めてから」としている。

(2014年10月18日朝刊掲載)

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