×

ニュース

原爆ドームと平和公園周辺の建築物 広島市が高さ規制先送り

■記者 藤村潤平

 広島市は15日、中区の原爆ドームと平和記念公園の周辺地区の建築物に高さ制限を設ける法的規制について当面見送ることを、市議会建設委員会で明らかにした。本年度中の実施を目指していたが、マンション所有者や住民たちが反対しており「地元理解が得られない」と判断した。

 市は、2008年に18の重点的景観形成地区を指定。このうち原爆ドームと平和記念公園の周辺について、景観法に基づく高さ制限を含んだ景観計画を先行して策定する方針を示した。

 しかし、地権者や住民が「財産権が侵害される」などと反発。市議会も昨年7月、住民グループが提出した計画の白紙撤回を求める請願を採択した。

 原爆ドームと平和記念公園の周辺の景観をめぐっては市が2006年、ドームからの方角などに応じ、4段階の高さ制限を規定した美観形成要綱を定めた。市が景観計画で目指す高さ制限の内容と同じだが、法的根拠はない。

 一方、景観法に基づく景観計画は、地域の良好な景観を形成するため建築物・工作物の高さ、デザイン、色彩などの基準を規定。建築する際は市への届け出が必要で、市は違反に勧告できる。ただ、変更命令は出せない。

 都市整備局の荒本徹哉局長は「まずは高さ制限を除いた景観計画を作る。方針撤回ではなく、地元の理解を得た段階で再度検討する」と説明している。

広島市の建築物などの高さ制限
 広島市は2006年以降、景観保全が必要な地区に美観形成要綱を定め、建築物などの高さ制限を進めている。原爆ドームと平和記念公園周辺地区には高さ20~50メートルの4段階の基準を設定。次いで中区の縮景園周辺地区には2007年、一律38メートルの基準を設けた。景観法に基づく法的な規制に先駆け、市の独自施策として実施してきた。

(2010年12月16日朝刊掲載)

関連記事
「平和考える場損なう」 公園周辺の高層ビル イコモス会長指摘 (09年11月 9日)
原爆ドーム周辺高さ規制 撤回請願 市議会委が採択 (09年6月30日)

年別アーカイブ