×

ニュース

放射性物質どう防ぐ 島根原発30キロ圏 漏れ想定訓練

 島根県は18日、中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の事故に備えた原子力防災訓練を原発30キロ圏の鳥取県、両県の6市と合同で実施した。原発から放射性物質が外部に放出したと初めて想定し、両県の住民約600人が30キロ圏外に避難。放射性物質の付着の有無を調べるスクリーニングが原発30~40キロ圏3カ所で実施された。

 送電線トラブルで同原発2号機の全電源を喪失し原子炉格納容器が破損、放射性物質が外部に漏れたとの想定。国や中電、自衛隊を含め計約100機関、約4千人が参加した。

 スクリーニングは出雲、雲南市と鳥取県大山町で実施。松江市城西地区の住民64人は、約90キロ南西の江津市中央公園に向かう途中の島根県宍道湖西部浄化センター(出雲市)で、代表者3人が、診療放射線技師や中電社員から測定器を体にかざす検査を受けた。島根県防災部の大国羊一部長は「スクリーニングが長引けば避難時の渋滞やパニックを招く。早急に詳細を決めたい」と話していた。

 原発5キロ圏内の松江市鹿島町内3小学校は、児童と職員計293人が、市の手配したバスで緊急退避所となった原発から10キロの市内の施設に避難。学校から連絡を受けて集まった保護者へ引き渡された。

 原発の南東約3キロの特別養護老人ホームあとむ苑(同町)では、建物内への放射性物質の進入を防ぐ特殊な空調装置を稼働させ、入所者15人を1階に集めて屋内退避させた。

 両県は事故の際、30キロ圏の約47万人を広島、岡山を含む中国地方4県69市町村へ避難させる計画。両県のシミュレーションでは、全員が30キロ圏外へ避難する標準的な時間は27時間50分としている。(川井直哉、樋口浩二、松本輝)

課題実感 尽きぬ不安 原発「放射性物質漏れ」訓練 島根原発30キロ圏

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の事故に備え、県が原発30キロ圏の鳥取県、両県6市などと18日に開いた原子力防災訓練。原発から放射性物質が放出されたと初めて想定した訓練は、放射性物質の検査方法をはじめ災害弱者への対応、圏外避難の課題が、あらためて浮き彫りになった。

スクリーニング

310人測定 2時間半

 放射性物質の付着を調べるスクリーニングは原発30~40キロ圏の避難ルートの出雲、雲南市と鳥取県大山町の3カ所で実施した。県宍道湖西部浄化センター(出雲市)では、国の指針に沿って松江、出雲市の9地区計194人のうち代表者3人ずつ計27人を測定。約1時間で終えた。

 一方、鳥取県は大山町で避難してきた310人全員を測定し、2時間半かかった。

 江津市まで避難した松江市の城西公民館館長森泰(ゆたか)さん(72)は「不安なので全員を調べてほしい。だが、時間がかかり避難が遅れるだろう」。放射線量が基準を超えた場合に必要となる除染は、先送りされた。

災害弱者

保護者メール未着1件

 授業中に原発事故が起こったとの想定で、松江市鹿島町の原発3キロ圏の恵曇、佐太、鹿島東の3小学校の児童計259人は、緊急退避所に指定された原発から約10キロのくにびきメッセ(同市)に、市が調達したバスで避難。学校からのメール連絡で集まった保護者に、学校職員が名簿で確認しながら児童を引き渡した。

 市内の勤務先から駆け付けた同町のパート従業員木村みつさん(28)は「いざというとき、子どもを運ぶバスは確保できるのか。道路は損壊、渋滞しないのか。不安は尽きない」と話す。

 保護者の登録メールアドレスが変更され連絡がつかなかったケースも1件あった。鹿島東小の金山美幸校長は「メールの管理を強化する必要がある」と頭を悩ませていた。

圏外避難

国道渋滞でバスに遅れ

 避難先の江津市中央公園(同市嘉久志町)には、松江市から64人がバス2台で到着。避難ルートの国道9号の渋滞などの影響で、約90キロ先に行くのに予定より約20分遅れて3時間35分かかった。鳥取県側でも米子市のバス1台が、大山町への到着が15分遅れた。

 両県のシミュレーションでは、30キロ圏の約47万人全員が、圏外に避難するのにかかる標準的な時間は27時間50分。松江市の主婦山本よし子さん(80)は「実際に事故が起きればもっと渋滞するだろうし、体力も心配」と不安そうな表情だった。

(2014年10月19日朝刊掲載)

年別アーカイブ