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広島県安芸太田の中国人強制連行で報告書 基金運営委 過酷な労働と和解後の軌跡

 戦時中、広島県安芸太田町の安野発電所の建設工事に強制連行された中国人労働者や遺族、弁護士たちでつくる「西松安野友好基金運営委員会」(東京)が、過酷な労働実態や西松建設(同)との賠償請求訴訟をめぐる和解成立後の活動を報告書にまとめた。運営委員8人が18日、広島市中区で記者会見し、戦後補償問題の解決に向けて取り組んだ成果を強調。「日中友好のために活用したい」と願った。

 報告書には強制連行された360人のうち、行方が分かった248人分の記録を収めた。顔写真を添え、連行の経緯や労働実態をつづる。2009年10月に和解成立後、運営委員が労働者本人や遺族を訪ねて証言を集めた。

 和解金2億5千万円で運営する同委員会は、労働者や遺族に補償金を支給してきたほか、発電所の敷地に石碑を建て、遺族を広島に招く事業を続けてきた。こうした活動に一区切りがついたとして報告書をまとめた。A4判、492ページ。日本語と中国語の合冊で1350冊を作製した。遺族たちに届け、日本では訴訟の支援団体などに贈る。

 1944年に伯父を亡くした運営委員の曲啓傑さん(47)=中国・青島市=は「本国の政府や学校に寄贈したい。歴史の事実を理解してほしい」と強調。運営委員長の内田雅敏弁護士は「日中関係が必ずしも良くない中、民間で事業を進めた経験はさまざまな戦後問題の解決に役立つ」と話した。(長久豪佑)

(2014年10月19日朝刊掲載)

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