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人権とは…共に考えた 福山・盈進中高生とハンセン病元患者の金さん(長島愛生園) 映画が今月末完成

 広島県福山市千田町の盈進中・高の生徒と、国立ハンセン病療養所長島愛生園(瀬戸内市)で暮らす金泰九(キムテグ)さん(88)の交流を描いたドキュメンタリー映画が今月末にも完成する。同中2年後藤泉稀(みずき)さん(13)の作文が、昨年11月に全国中学生人権作文コンテスト(法務省など主催)で大臣賞を受賞したのをきっかけに、東京の映像会社が今年5月から製作を進めていた。生徒は11月16日に愛生園で金さんの米寿を祝う会を開き、一緒に映画を観賞する。(東谷和平)

 映画は「こんにちは、金泰九さん―ハンセン病問題から学んだこと(仮題)」で約25分。金さんが26歳で同園に収容され、妻と生き別れたことなどが紹介される。人権や平和について考える同中・高のヒューマンライツ部の部員がハンセン病元患者の境遇や思いを金さんから聞き取る様子、金さんとの交流を機に後藤さんが作文を書いた様子の再現などを収録。金さんや部員たち本人が出演している。

 同部の部員は、らい予防法廃止の翌年の1997年から毎年、愛生園を訪問。家族や社会から隔離され、根強い差別や偏見に苦しんだ元患者から話を聞き、人権について考えている。現在約30人が在籍している。

 後藤さんは映画のワンシーンで「自分にも友達にもノーと言える真の勇気を持たなければならない。ちょっとした悪口、間違った知識や行動が差別を生むのだから」と訴える。製作した映学社は、後藤さんの作文を「差別を体験した金さんを通し、人権についてよく考えている」と評価し、映画化を決めたという。

 同社は全国各地の視聴覚ライブラリーなどを対象に作品を販売予定。後藤さんは「金さんから学んだことが、差別や偏見のない社会の実現に役立てればうれしい」と話している。

(2014年10月20日朝刊掲載)

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