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社説・コラム

社説 福島県知事選 復興の将来像 見えたか

 東京電力福島第1原発の事故後、初めての福島県知事選は、県民の選択が注目された。過去最多の立候補者6人のうち新知事に選ばれたのは、前副知事の内堀雅雄氏である。

 焦点は、引退する佐藤雄平知事が手掛けた震災と原発事故からの復興施策をどう評価するかだった。事実上の後継候補である内堀氏の当選は、これまでの県の施策について県民が一定の理解を示した結果と受け取れるだろう。

 しかし、今後の復興をどのように進めていくのか、具体的な論戦は低調だったと言わざるを得ない。それは低い水準にとどまった投票率にも表れている。選挙を通じて、肝心の地域の将来像が十分に語られたとはいえまい。

 知事選が盛り上がりを欠いたのは、選挙戦の構図も大いに影響していよう。民主党が先に支援を決めた内堀氏に対し、自民党が相乗りした。

 当初、自民党の福島県連は独自候補の擁立を決めたが、党本部の了承が得られず、方針転換を迫られた。7月の滋賀県知事選に敗れ、来月には現職を推す沖縄県知事選を控える中で、今回は負けられないとの危機感が党本部にあったのは容易にうかがえる。

 本来であれば、与野党がそれぞれ推す候補がしっかりと対立軸を示し、政策論争を交わすのが望ましかったはずだ。

 今回の選挙戦で内堀氏がまず訴えたのは、福島県内にある全ての原発の廃炉である。福島第1原発だけではなく、県内にあるもう一つの第2原発も全基を廃炉にすべきだと主張した。

 これについては、従来も福島県が政府や東電に要請し続けており、内堀氏を含む全候補が同じ訴えをしていた。県民からすれば、既定路線との受け止めが多かっただろう。

 復興の進め方では、避難地域の一日も早い再生が県全体の活力につながると、内堀氏は強調してきた。具体策として、農林水産業や商工業の再生とともに、世界各地から集まる原発の廃炉技術を基に新産業を起こし、雇用にもつなげるとする。

 ただ、その道筋が険しいことは内堀氏自身が認識していよう。福島県内では放射線量が高い10市町村で政府の避難指示が続いており、多くの地域で住民帰還のめどは立っていない。今も県内外で約12万人が避難生活を余儀なくされている。

 内堀氏がすぐに取り組まなければならない問題は、除染で出た廃棄物を保管する国の中間貯蔵施設の建設である。帰還に必要な除染を急ぐ必要があるとして福島県が先月、受け入れを決めたばかりだ。

 とはいえ、最終的に処分する場所は決まっておらず、地元住民の懸念は根強い。いかに地元と合意しながら、復興を進められるか。内堀氏の手腕が早速問われることになる。

 今回の選挙は、古里を離れている有権者も郵送などによる不在者投票や、避難先に設けられた投票所で復興を願う1票を投じた。そうした切実な思いに応える責務が新知事には課せられよう。

 与野党とも「オール福島」をうたい相乗りした限りは、国政の場で復興を強力に後押ししなければならないのは、言うまでもない。

(2014年10月27日朝刊掲載)

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