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ヒロシマ 多言語で発信 平和MCウェブサイト リニューアル半年

 中国新聞社が、ヒロシマ平和メディアセンター(平和MC)のウェブサイトをリニューアルして、今月下旬で半年になった。最大の柱は多言語化だ。2008年1月の開設以来、日本語と英語で被爆体験に基づくノーモア・ヒロシマの訴えを国内外に発信してきたが、今年4月から中国語とフランス語を新たに追加。アクセスがあった国・地域は200に迫る。来年の被爆・戦後70年に向け、被爆地広島からの世界発信をさらに強めていく。

核保有国の中国・仏語追加

 多言語によるヒロシマ発信を強化するため、日本語と英語に追加したのは中国語とフランス語。ともに翻訳には、広島大と公益財団法人ヒロシマ平和創造基金の協力を得た。

 基金は、「平和サポーター制度」の趣旨に賛同した人たちから集まった寄付を翻訳費用に充てる考えだ。

 英語を含むこれら海外3言語は、いずれも核兵器保有国の言葉だ。サイトを通して、保有国の人々にも原爆がいかに非人道的か、頭上に落とされたら人間や街はどうなるか、被害の実態や放射線被曝(ひばく)のもたらす危険性などを訴えている。

 被爆70年が間近に迫っているものの、世界には今なお1万6千発もの核兵器が存在する。核実験や原発事故の被害、テロ、紛争も絶えない。だからこそ、原爆・平和・核問題の専用サイトとしての役割は重い。

 インターネットを活用した多言語での発信。ヒロシマの訴えを海外にも広げ、核兵器も戦争もない世界を目指す試みだ。地方紙としては異例の取り組みともいえる。ただそれは、被爆地広島に拠点を置き、原爆で当時の従業員のほぼ3分の1に当たる114人もの犠牲者を出した新聞社としての使命でもある。

平和公園の「今」情報満載

 平和記念公園(広島市中区)の「今」が分かるコーナー拡充が、多言語化と並ぶ4月のウェブサイトリニューアルの柱だった。

 平和学習のため、国内外から平和記念公園を訪れる人は後を絶たない。こうした人たちの役に立つコーナーを目指している。

 世界遺産の原爆ドームや、原爆の子の像、原爆慰霊碑…。多くのモニュメントが公園内にある。サイトに載せた地図に示されたモニュメントのマークをクリックすれば、写真や説明文が飛び出してくる。日本語だけではなく、英語、フランス語、中国語でも読むことができる。

 原爆の被害や被爆者の思いについて学べる原爆資料館や、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館についての情報も載せている。

 公益財団法人の広島観光コンベンションビューローが管理・運営する観光サイト「ひろしまナビゲーター」とも連携。市内中心部にある宿泊施設の案内や、平和記念公園をはじめ主な観光エリアの360度パノラマ映像にもアクセスできる。

ドーム内部パノラマ 24時間生中継も

 被爆地広島の象徴は、何といっても世界遺産の原爆ドーム(広島市中区)だろう。平和MCのウェブサイトは、その姿を24時間生中継している。

 昼間は、都心部に立ち並ぶビルをバックに、平和記念公園の木々の緑に浮かぶ。夜は闇の中、淡い光で照らされる。時間帯や季節によって微妙に変わる表情。そんなヒロシマのシンボルの「今」が、ライブ感あふれる映像で、いつでも、そして世界中どこからでも、見ることができる。

 原爆ドーム内部を撮影したパノラマ映像もある。ドームを見慣れた広島市民にとっても、内側から見たドームの姿は新鮮だ。普段は目にすることのできない貴重な映像が堪能できる。

 69年前の惨状を知るドーム。何を後世に語り継ぎ、世界に伝えていくべきか、映像を見ながら思いをはせてほしい。

アラカルト

 リニューアルに併せて、イメージも刷新。ウェブサイトの基調の色をそれまでの緑から青に変えた。

 サイトには、ニュースや論評記事、原爆の記録写真など約1万7千本を掲載している。広島と長崎に投下された原爆の基礎知識や被爆者の証言をはじめ、1945年8月6日、広島で何が起きたのか、さまざまな角度から光を当てている。

 「遺影は語る」「世界のヒバクシャ」「知られざるヒバクシャ 劣化ウラン弾の実態」など、中国新聞が長年蓄積してきた多くの連載記事もピックアップ。被爆者の切実な訴えや、原発事故に伴う放射能汚染被害の広がりなど、核時代がもたらした「負の遺産」の問題を紹介することで「今」をも浮き彫りにしている。

ヒロシマ多言語で発信

海外からの感想

中国(北京) 大学院生 李雲さん(25)

 中国では被爆地としての「広島」は有名だが、詳しい被害や実態を学ぶ機会はほとんどない。被爆地の新聞社に中国語のサイトができたのはいいきっかけになる。中国は戦争の被害国だが、ヒロシマの人たちも同じように国が始めた戦争の犠牲になったと知った。被爆者の証言は非常に生々しく、核の脅威を伝えてくれる。日本語を学ぶ学生として最近の日中関係の悪化はとても残念に思っていたので、互いに交流してもっと理解し合えるためにも、中国語での記事発信を進めていってほしい。

中国(上海) 幼稚園勤務 陸玲さん(26)

 戦争は国民にとっての災難だ。社会が混乱し、愛する人がこの世を去り、生活を維持できなくなった民衆は夢や希望を失う。同じ地球に住む私たちは、みんな平和を願っている。平和を受け入れることで、私たちの生活はよりよくなる。平和MCの記事が中国語で読めるようになったのはいいことだ。

インド 学校長 フィジ・ピー・ジョージさん(40)

 平和MCのウェブサイトは、本当に素晴らしい。ジュニアライターが平和に関する行動に積極的に関わっている。若い人の言葉は、心からのメッセージと受け取れた。ページを移動するごとに、平和記念公園、原爆資料館、幾つもの慰霊碑、8月6日の平和記念式典を体験することができる。人生の中で最も貴重な瞬間として、今夏訪れた平和記念公園で多くの人と過ごした時間を思い起こすことができる。

 中国では被爆地としての「広島」は有名だが、詳しい被害や実態を学ぶ機会はほとんどない。被爆地の新聞社に中国語のサイトができたのはいいきっかけになる。中国は戦争の被害国だが、ヒロシマの人たちも同じように国が始めた戦争の犠牲になったと知った。被爆者の証言は非常に生々しく、核の脅威を伝えてくれる。日本語を学ぶ学生として最近の日中関係の悪化はとても残念に思っていたので、互いに交流してもっと理解し合えるためにも、中国語での記事発信を進めていってほしい。

インド 教員 アーシャ・マッシューさん(45)

 さまざまな国に平和MCのウェブサイトを広めようとしている中国新聞のジュニアライターにお祝いの言葉を述べたい。サイトは非常に有益で、さまざまな国との相互理解を深めるのに役立つ。平和のメッセージを伝えるのにも有効だ。若い世代が平和のメッセンジャーになろうと、やる気も引き出す。このサイトが全ての人の心に平和のメッセージを雨のように振りまくのを手助けしよう。

インド 教員  ルビー・アントさん(41)

 平和MCのウェブサイトは、広島への原爆投下について真の情報を提供している。細部にわたって非常に印象的だ。今年訪れた美しい街広島の思い出を振り返る機会も与えてくれた。また中国新聞のジュニアライターが世界平和を促進しようとする努力は立派で、感謝している。

イラン アナリスト マズダック・アリザデさん(30)

 原爆とその影響について歴史的な情報など、平和MCのウェブサイトの内容は非常に良い。最近広島を訪れたので、平和記念公園のライブ映像を見て強いインパクトを受けた。動画やインタビューなどを増やせば、もっと若い人たちが原爆について学びやすくなるだろう。

カザフスタン ジャーナリスト(フリー) ジルキバィェワ・シャラファットさん(31)

 2011年に広島市を訪問した。平和MCのウェブサイトをよく読んでいる。世界で有名なヒロシマを紹介する大切なサイトで、世界の国々と日本との懸け橋だと思う。広島をカザフスタンのみんなに紹介する記事などを書いた時も、このサイトについて書いた。特にニュースや日本の記者たちの記事などを読む。一番好きなのは、サイトの基調となる青です。平和の象徴で、よく合っている。トップページに出てくる広島の景色の写真がとてもきれいだ。原爆記録写真のコーナーでは豊富な広島の歴史写真が見られる。世界のヒバクシャやフクシマについても多くの情報を得られる。

ウクライナ プログラマー  インナ・コステュックさん(27)

 平和MCのウェブサイトを最初に見た時は、原爆が落ちた時の広島についてのサイトだと思ったが、ヒロシマに関するそのほかの情報も掲載されていることに気付いた。私は、原爆投下時の広島の写真に関心がある。視覚的な情報の方が、文章よりもずっと興味深いと思う。もっと写真や動画を増やしてほしい。

チェコ 翻訳・通訳者 テレズィエ・フシュコバーさん(32)

 平和な時に生まれて戦争の恐ろしさを知らない世代の一人として、自分がどれほど恵まれているかを知るため、戦争を経験しなければならなかった人たちの話を紹介していただけるのは、とても重要だ。感謝と思いやりを身に付け、戦争を繰り返さないよう、過去の情報と現在の平和活動の情報を手に入れる手段として、平和MCのウェブサイトも大いに貢献してほしい。

スウェーデン 会社員 レムケ・サビネさん(33)

 数年前に広島の原爆資料館を訪れた際、とても感銘を受けた。特に記憶に残っているのは、広島市長が核実験を行った国々に宛てた平和を願う内容の手紙だ。こうした活動が平和にとても貢献すると感じた。平和MCのウェブサイトは、事故を起こした福島第1原発の記事が興味深い。核兵器だけではなく、原子力も脅威になりうると人々に注意喚起することが重要だ。スウェーデンは、比較的平和な国だが、原子力発電がある。原子力の危険性についての認識と議論が不足していると思う。

フランス 銀行員 レミ・リュックさん(28)

 原爆の写真ギャラリーと被爆者の証言は非常に良い。原爆の恐怖をはっきり示し、繰り返してはいけないと私たちに認識させてくれる。モニュメントを紹介する平和記念公園の地図は興味深い。全体的に啓蒙(けいもう)的で教育的だ。ただ、非常によくできている英語のページに比べて、フランス語版はまだ不十分。写真ももっと増やしてほしい。

フランス 教員 カトリーヌ・パリスさん(55)
 平和MCのとても良いウェブサイトは、1945年8月6日に何が起きたのかについて完全な知識を与えてくれる。 私たちの母や姉妹だったかもしれない被爆者たちの証言は、いかに巨大なショックだったのかを感じさせてくれる。その平和のメッセージは称賛に値する。

 平和記念公園は、核兵器の恐ろしさや、最も重要な平和を守ることを若者に教え、未来の生命の保護にも協力している。フランスの高校生は、こうした問題に非常に敏感だ。このサイトにより自分たちの考えを豊かにすると思う。

フランス 大学院生 オレリー・デガネロさん(23)

 被爆70年が近づき、1945年8月6日に何が起こったのか体験して生き残った人たちの多くが次々に亡くなっている。今日では、核兵器だけでなく、原子力エネルギー全般が、地球全体の脅威となっている。平和MCのウェブサイトは、これらの問題について世界の多くの人々が学ぶアクティブな場所や機会となっているようだ。もちろんサイトの主要部分は核兵器の問題だが、福島第1原発事故に関連した幾つかの記事があるように、核の危険は原発とも関連することを忘れてはいけない。

イギリス ITコンサルタント  ローズ・ミラーさん(30)

 平和MCのウェブサイトは、シンプルでフォローしやすいレイアウトで、配色も落ち着いている。写真は、サイト訪問者からの共感を引き出すよう選ばれている。原爆ドームのライブ映像やパノラマ映像は非常に興味深い。

 11歳の時、学校に折り鶴と原爆の写真を持った人が来て、原爆で多くの子どもが死んだり苦しんだりしたことを学んだ。戦争は破壊的で無実の人々が苦しむと世界中の子どもたちに教えることが重要だ。

アイルランド 教員 デイビッド ギボンズさん(29)

 ヒロシマ関連や、核の過去から現在までについての記事がうまく配置されている。特に、福島第1原発事故の被災者がヒロシマから何を学ぶことができるかについての記事は、西洋の人間にとっては興味深い。ツイッターやフェイスブックでの存在感を増すと、読者層の増加につながるかもしれない。

スペイン 教員 デイビッド・スアレズさん(29)

 ヒロシマや、フクシマ、そのほかの核に関係する国々についての非常に興味深いウェブサイトだ。核関連の歴史的な事実や写真、ニュースを伝えてくれる。

エジプト ITコンサルタント ハティム・モーシーさん(30)

 平和MCのウェブサイトは、素晴らしい。内容には満足している。歴史と、私たちみんなのためによりよい世界になるよう前進する目的をしっかり意識させてくれる。原爆の記録写真に最も魅了された。2013年4月に広島の平和記念公園を訪れた時も視覚的なインパクトが非常に大きかった。

ルワンダ 牧師 カバシンガ・ファティエルさん(40)

 8月にルワンダで開かれた原爆展を見に行った。1945 年に広島で起こったことを考え、とても悲しく感じた。その後、平和MCのウェブサイトを見て、日本がどのように復興し、平和を促進してきたか、あらためて学んだ。平和のため、私たちが意見交換する機会を持てればうれしい。

ニュージーランド 高校3年 イザベル・コーヘンさん(18)

 ウェブサイトはシンプルで分かりやすい。平和のニュースや被爆者の話が興味深い。ただ、トップページで紹介されている記事が全て同じフォントやサイズのため、目立たないかもしれない。写真などを入れたら、サイトを訪れた人に「これを読みたい」と思ってもらえるかもしれない。平和な世界になるように、広島からメッセージを世界中のみんなへ伝えてほしい。

オーストラリア シドニー大准教授 ジェイク・リンチさん(49)

 メディアが紛争を悪化させていると、訪れた世界各地でよく聞く。そうあるべきではない。ジャーナリズムは人道に尽くすべきだし、平和を与える機会となるべきだ。最近、暴力とメディアが関与するようになった戦争ジャーナリズムが優位になってきた。長年の懸案だったが、平和MCのウェブサイトは、それに対抗するものになっている。希望への案内役になっている。

米国カリフォルニア州 大学生(福岡に短期留学中)ニック・センチュリアさん(18)

 このウェブサイトを見るまで、核兵器のことは詳しくは知らなかった。掲載された記事は、核兵器について詳しく、信念を持った論調で書かれている。同時に一般的で教育的な記事もある。そのおかげで、僕は被爆者や被爆者の子孫の視点を理解する前提として、よく知らなかった日本の政策といったテーマについても、きちんと学べた。

米国イリノイ州 会社員 ロバート・ペティさん(47)

 米海兵隊に所属していた時、広島の原爆資料館に行き、平和記念式典にも出席したことがある。以来、ヒロシマの精神的遺産を支持している。平和MCのウェブサイトは、海外の人たちが原爆やヒロシマの精神的遺産について細かく学ぶのに非常に役立つと思う。サイトそのものが遺産の延長であり、未来の世代に遺産を引き継ぐのに、貴重なものである。いつの日か、めいやおいを広島に連れて行き、ヒロシマについて学ばせたい。

カナダ 会社員 ロバート・ホリンジャーさん(57)

 平和MCのウェブサイトは、広島と長崎に落とされた二つの原子爆弾による非常に不幸な悲劇について詳しく知ることができる。爆心地からの、これほど迫力ある写真を今まで見たことはなかった。原爆が被爆者に与えた重要な影響について知らない私のような人間には非常に有益で教育的だ。被爆証言のように、自分が関心を持つ情報を見つけやすい。

コスタリカ 大学3年 ナタリー・ベネガスさん(21)

 世界を少しでも平和で住みよくするため、このようなウェブサイトは重要だ。特にオピニオンのコーナーが好き。世界中のいろんな人が平和について語っている。軍隊のない平和な国に住むと、心穏やかに暮らせる。広島に留学していた時、平和に感謝するとともに、戦争で苦しんでいる人に何かしたい、と考えるようになった。いいニュースを読むことができるのも、このサイトのいい点だと思う。

ブラジル 会社員 ニーナ・サワダさん(25)

 原爆に関する多様な情報が公開されており、被害者でまだ生存している人たちの証言が特に印象に残った。私の父は広島育ちの日本人で、私自身、今夏、日本を訪れて原爆ドームや原爆資料館を見学し、悲惨さに衝撃を受けた。今後、このウェブサイトの存在をブラジルの知人、友人に知らせ、より多くの人が核兵器の怖さを知ることで反核、反戦の意識を高めてほしい。

アルゼンチン 銀行員 セルヒオ・アラメイダさん(40)

 アルゼンチンでも日本が被爆国であることはよく知られているが、原爆の被害の実態に関する情報はそれほど多くない。その意味で、このウェブサイトの全ての情報が興味深かったし、広島の一新聞社がこのような活動をしていることにも感銘を受けた。今後、スペイン語訳も用意してもらえたら、南米各国やスペインからさらに多くの人がアクセスできるのではないか。

(2014年10月27日朝刊掲載)

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