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「黒い雨」 28日に厚労省検討会初会合 指定地域拡大 道開くか

■記者 金崎由美

 原爆投下直後に降った「黒い雨」の指定地域拡大に関する厚生労働省の検討会が28日、初会合を開く。広島市などが5月に公表した調査結果は、降雨地域が従来の国指定より大幅に広いと結論付けた。被爆者健康手帳の取得が可能となる指定地域拡大の道は開けるのか。検討会が市などの調査結果をどう評価するかが焦点となる。

 24日は検討会の初会合を前に、県「黒い雨」原爆被害者の会連絡協議会の8人が県庁を訪問し、広島市と県の担当者に要請書を提出した。降雨地域が従来の国指定より5~6倍広いとする市などの調査を高く評価。これを根拠に指定地域の拡大を国に迫るよう求めている。高野正明会長は「市長、知事を先頭に強く要望してほしい」と力を込めた。

 指定地域の拡大をめぐっては、市や県は7月、降雨地域の全てについて無料で健康診断が受けられ、がんなどになれば被爆者健康手帳を取得できる「第1種健康診断特例区域」に指定するよう国に要望した。

 こうした動きを踏まえ国は検討会の設置を決めた。広島赤十字・原爆病院の土肥博雄院長や精神医学などの研究者8人が参加する。市などが公表した調査結果は、市と県が2008年に実施した健康意識調査と、核物理学などの専門家でつくる研究会の報告書の二つ。検討会は今後、この中身を科学的に検証する。

 国は現在、1945年に専門家が行った調査結果が「大雨地域」とした範囲だけを特例地域に指定している。「小雨地域」などその他は援護対象外だ。

 一方、長崎市の指定地域に関しては厚労省が2000年に検討会を設置し、拡大した。だが、救済対象は精神疾患に絞られ、被爆者手帳の取得をできない区分を新たに設けることで決着している。

 そのため、広島の被爆者からは、指定地域が拡大されても長崎と同様に救済範囲が狭く限定されないか、警戒する声も出ている。

(2010年12月25日朝刊掲載)

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