×

社説・コラム

社説 沖縄知事選 基地問題 大いに論戦を

 沖縄県知事選がきょう告示され、11月16日に投開票される。現職・新人4人がこれまでに名乗りを上げており、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設が最大の争点になりそうだ。国の沖縄振興策を評価し、「県外移設」から辺野古沿岸部の埋め立て承認に転じた仲井真(なかいま)弘多(ひろかず)知事の姿勢が問われるのは間違いない。

 既に発表された政策や公約によると、新人3人のうち保守系で前那覇市長の翁長(おなが)雄志氏は辺野古移設を認めない主張で、革新系も支援する。前民主党県連代表の喜納昌吉氏は普天間の無条件閉鎖を掲げている。一方、元郵政民営化担当相の下地幹郎氏は辺野古移設の是非を問う県民投票を求めている。

 これに対し、自民党が推す仲井真氏は普天間の危険性除去を最優先に、辺野古移設を容認する立場だ。

 だが、1月の名護市長選では辺野古移設に反対する現職が勝利した。本来なら政府はこれを重く受け止め、米軍基地が集中する現実に即して抜本的な解決の道筋を模索すべきだった。

 にもかかわらず、安倍政権には辺野古移設を立ち止まって考えようとした形跡はうかがえない。8月には海底調査を始め、反対派住民の海域への立ち入りには厳しく対処する姿勢を見せている。一方で次々と繰り出す手だてには、県知事選を控えた思惑が透けて見えよう。

 9月には普天間の「5年以内運用停止」を目指すと、菅義偉官房長官が表明した。仲井真氏も要望していたことだが、一部報道によると、直ちに米側から「空想のような見通しだ」と反発を招いたという。仮に辺野古移設が進んでも完成時期は早くても2022年とされており、5年以内の移駐ができないのは明白だろう。

 また、今月に入って基地内の環境調査に関する新たな地位協定で日米が実質合意したと発表した。昨年8月の宜野座村ヘリ墜落事故もあって懸案だったが、早くも立ち入り調査の実効性に疑義が出されている。十分とはいえない内容のままで、なぜ発表を急いだのだろうか。

 さらに、垂直離着陸輸送機CV22オスプレイ12機を来年7月にも、横田基地(東京都福生市など)に配備する方向で調整するという。嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)配備も検討していたが、基地負担軽減への姿勢を見せたいのだろう。むろん、実現するかどうかは見通せない。

 政権与党の公明党が、本部、県本部ともに自主投票を決めたことに比べると、外交や防衛が絡む問題とはいえ、政府・自民党サイドの過剰な反応とはいえないか。結果として普天間の固定化か、辺野古移設か、二者択一を沖縄県民に迫るような図式にもなっている。

 一方で翁長氏も、埋め立て承認の取り消しや撤回を強調しなければ迫力を欠く。仮に仲井真氏以外の知事が誕生しても、埋め立ての承認自体を覆すには相当の手腕が必要だと見られているからだ。だからといって移設を黙認すれば、県民の不信感はさらに高まるに違いない。

 辺野古移設については自民支持層の経済界や医師などの間でも、分岐が生じている。政権は一度立ち止まり、最低限でも知事選での論戦を見守るべきではないだろうか。

(2014年10月30日朝刊掲載)

年別アーカイブ