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被爆の記憶どう継承 広島市立大でシンポ

 被爆の記憶を後世にどう伝えるかを考えるシンポジウム「ヒロシマの記憶を未来へ」が1日、広島市安佐南区の広島市立大であった。継承の手だてを中心に、専門家たち6人が幅広く意見を交わした。

 観光学者で追手門学院大准教授の井出明氏は悲しみを共感し、受け継ぐ手法として戦争や災害の跡を訪ねる「ダークツーリズム」の意義を強調。遺構の保存に加え、デジタル技術活用、博物館による発信などを挙げ「多様な手法を組み合わせたい」と述べた。

 東日本大震災の被災者から聞き取った体験談を発信している福島市の詩人和合亮一氏は「言葉は人を突き動かす。生の声を残し、伝える方法を考えたい」と提案。これを受け、東京大の吉見俊哉副学長は被爆者の証言録や体験談をアーカイブ化する取り組みが広がっている現状を指摘し、「大学も記録を学びに生かす役割を担わねば」と応じた。

 展示の大幅刷新を計画する原爆資料館(広島市中区)の志賀賢治館長は「被爆者の視点に立ち、実物資料で『人間的悲惨』をきちんと伝える」とのコンセプトを紹介。ほかに「原子力の平和利用との向き合い方をどう伝えていくかも考えてほしい」との意見も出た。

 市立大が開学20周年記念事業の一環で主催。約100人が訪れた。(田中美千子)

(2014年11月2日朝刊掲載)

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