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在韓被爆者 悲願の手帳 64年ぶり再会 知人証人に

■記者 金崎由美

 広島で被爆した韓国人の羅戌連(ナムヨン)さん(72)=陜川(ハプチョン)市=が12日、広島市役所で被爆者健康手帳を受け取った。被爆直後に生き別れとなり、64年後に偶然再会した厳粉連(オンブンニョン)さん(82)=同=が証人となった。この日、2人は一緒に市役所を訪れた。

 羅さんの父は、建設業を営む厳さんの父のもとで働いていた。2人は爆心地から約2キロの三篠本町の同じ敷地に住み、姉妹のようだった。羅さんは自宅で被爆。逃げまどう中で学徒動員先にいた厳さんとすれ違ったが、その後の消息は分からないまま1945年に両親と帰国した。

 再会したのは、1964年の歳月を経た2009年4月。羅さんが暮らす「陜川原爆被害者福祉会館」に厳さんが入所してきた。被爆を理由に差別を受け、「あの日」の心の傷を抱えてきた羅さん。だが、証人が見つからず被爆者健康手帳の取得は諦めかけていた。

 市役所で手帳を握りしめた羅さんは「健康不安も少しは軽くなる。被爆半年後に死んだ父と手帳の存在も知らず30年前に死んだ母の墓前に知らせたい」と泣き崩れた。自身は約30年前に取得した厳さんは「力になれて本当によかった」と喜んだ。

(2011年1月13日朝刊掲載)

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