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「核なき世界どこへ」 米性能実験 ヒロシマ 広がる怒り

 米国が核兵器の性能を調べる実験を9、10月に繰り返していたことを明かした4日、被爆地広島に怒りが広がった。被爆者は「『核なき世界』はどこに行ったのか」と憤り、広島県や広島市もオバマ大統領に抗議文書を送った。

 「核兵器廃絶を願う世界の流れに逆らっている」。県被団協(金子一士理事長)の大越和郎事務局長(74)は語気を強めた。国連総会第1委員会(軍縮)では2週間ほど前、日本など155カ国・地域が核兵器の非人道性と不使用を訴える声明を発表したばかり。「声明に賛同しながら米国の実験は黙認する日本政府もおかしい」と不満をあらわにした。

 もう一つの県被団協の坪井直理事長(89)は「米国は臨戦態勢にあるぞとのアピールに見える。オバマさんには期待したのに」と嘆く。「黙っていられない。これを最後にしろと言いたい」と強調した。

 広島市の松井一実市長は抗議文で「核開発推進の口実を(他国に)与える」と批判。「被爆者のつらく悲しい体験」への理解を求めた。湯崎英彦知事も「核兵器廃絶に向けて高まりを見せる国際社会の動きを阻害する」と訴えた。

 広島市立大広島平和研究所の水本和実副所長(核軍縮)は「米国は他にも細分化した実験を積み重ね、核兵器の性能を保っている。オバマ大統領が理想をいくら掲げても、国民の支持を失いつつあり、共和党の反感を買ってまで備蓄核の大幅削減へかじを切るとは考えにくい」とし、米国の核軍縮の推進に悲観的な見方を示した。(田中美千子)

(2014年11月5日朝刊掲載)

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