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在外被爆者の闘い語る 在ブラジルの森田隆さん 広島 援護充実への交渉収録

 広島で被爆後にブラジルへ移住し、南米の被爆者運動の先頭に立ってきた森田隆さん(90)=サンパウロ市=が6日、広島市中区の広島国際会議場で、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(中区)による被爆者証言ビデオの収録に応じた。日本国内と在外との援護格差をなくすための闘いを振り返り、平和への思いを熱く語った。

 森田さんは現在の佐伯区出身。カメラの前で、憲兵として勤務中に爆心地から1・5キロの路上で被爆し、首などに大やけどを負った体験を証言。3日後に入院するまで救助などの任務に従事したといい「地獄を見た。どんな人間も絶対、あんな目に遭ってはいけない」と何度も繰り返した。

 戦後は市内で時計店を営んだが、10年ほど後、白血球が異常に増え、震えに襲われるようになったという。気候が健康にいいと聞き、1956年に妻子とブラジルへ渡った。84年に在ブラジル原爆被爆者協会(現ブラジル被爆者平和協会)を設立して会長に就いてからは、在外被爆者への援護充実へ日本政府などとの交渉や訴訟に尽力。「日本政府は当時『国を捨てたのはあんたたち』と移民に冷たかった」と話した。

 2時間に及んだ証言を同館が約20分間にまとめ、来春から館内とホームページ(HP)で公開する予定。森田さんは会の活動のため先月29日に帰郷した。来月3日まで日本に滞在する。(田中美千子)

(2014年11月7日朝刊掲載)

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