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被爆楽器、福山に響け バイオリン・ピアノで25日慈善公演 「心にしみつく音色」

 広島の原爆に遭ったバイオリンとピアノが協演する慈善コンサートが25日午後6時から、福山市松浜町のリーデンローズである。来年の被爆70年に向け、「楽器の運命を通して平和の尊さを伝えたい」と市内のNPO法人が企画した。7日、出演するバイオリニストで、大阪フィルハーモニー交響楽団首席コンサートマスターの田野倉雅秋さん(38)たちが市役所を訪れ、来場を呼び掛けた。(加納亜弥)

 バイオリンはロシア革命を逃れて来日し、広島女学院中・高(広島市中区)の前身の広島女学校で音楽教師を務めた故セルゲイ・パルチコフ氏(1893~1969年)が愛用した品。爆心地から約2・5キロの自宅で被爆し、戦後は米国に渡ったという。1986年に遺族が同校に寄贈。2011年末にイタリア在住のバイオリン製作者石井高さん(71)が修復した。

 田野倉さんは、石井さんと福山市役所で会見し、このバイオリンについて説明した。かつて広島交響楽団でコンサートマスターを務めた田野倉さんは「柔らかく温かい音。楽器に込められた人々の思いや歴史を次代につなげたい」。石井さんは「戦火に翻弄(ほんろう)され、その音色は人々の心にしみつく。価値は計り知れない」と語った。

 グランドピアノは1937年製。爆心地から約2キロで閃光(せんこう)を浴びた。修理した調律師矢川光則さん(62)=広島市安佐南区=は「あの日を知る二つの楽器がそろう貴重な機会」と話す。当日はピアニスト横山幸雄さん(43)が奏でる。

 クラシック6曲の協演を予定。石井さんと矢川さんが楽器の背景を説明するプレトークもある。全席自由3千円。収益の一部は8月の広島土砂災害の被災者義援金に充てる。NPO法人文化を未来につなげる会Tel084(982)8627。

(2014年11月8日朝刊掲載)

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