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社説・コラム

『スポットライト』 現実に近い想定が必要

原子力防災訓練に参加した松江市の城西公民館館長 森泰さん

 「より現実の事故を想定したレベルの高い訓練が必要だと痛感した」。島根県が10月18日、中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の事故に備え、原発30キロ圏の鳥取県、両県6市などと開いた原子力防災訓練で、同市から江津市に避難した。

 松江市城西地区の64人が、直線で約90キロの道のりをバスで移動。途中の出雲市で放射性物質の付着を調べるスクリーニングを受け、約3時間半後に到着した。「準備が周到だったから到着後も皆元気だった。でも実際には、情報の伝達漏れや渋滞など安全な避難には何倍ものハードルがある」と考える。

 そこで県に提案するのが、参加地区と日程を決め、避難開始の時間を事前に知らせない訓練。知らせを受けてから、すぐに住民が避難を始める手法だ。「多少は準備不足になり現実に近づく。避難前の集合やスクリーニングの課題が浮き彫りになるはず」とみる。「そうした訓練にはいくらでも協力する」

 原発から10キロ前後の同地区で、公民館長を務めて11年になる。「稼働の有無にかかわらず原発のリスクは当面残る。ならば、身を守る備えを少しずつでも充実させていきたい」(樋口浩二)

(2014年11月8日朝刊掲載)

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