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社説・コラム

『書評』 水俣から福島へ―公害の経験を共有する 公害禍から見る原発事故 

 福島第1原発事故の後、全国各地で避難生活を送る親子の健康相談を続ける小児科医師山田真さん(73)=東京都西東京市=が「水俣から福島へ―公害の経験を共有する」=写真=を出版した。森永ヒ素ミルク中毒事件や水俣病といった公害問題の被害者支援に40年以上携わった経験から、原発事故後にも繰り返された「隠蔽(いんぺい)」や「終息宣言」の問題を鋭く指摘している。

 「ニセ患者」「金目当て」…。加害企業や国の責任を追及する公害病の患者団体に向けられた冷たい視線が今、原発事故後の放射線被害を訴える避難家族に向けられていることを憂慮する。健康影響の解明の難しさが現在の福島につながる広島、長崎の原爆被害やビキニ水爆実験にも章を割き、医師として「切り捨てられようとする人たちとともに生きた年月」で深めた思いをつづった。192ページ。2052円。岩波書店。(石川昌義)

(2014年11月13日朝刊掲載)

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