×

社説・コラム

[施行迫る特定秘密保護法] 北海道警の裏金問題を告発した元道警釧路方面本部長・原田宏二さん(76) 

公安の監視強化懸念

 特定秘密保護法は警察、特に警察庁の直轄である公安部門の権限を強化する。秘密に指定される分野のうち、スパイなどの「特定有害活動」やテロの捜査を担当するためだ。秘密を取り扱う人を調査する「適性評価」も事実上、公安警察が担う。

 1957年に北海道警に入り、方面本部長や署長を歴任。退職後の2004年に道警の裏金問題を告発し、07年に開かれた警察を目指す市民団体「市民の目フォーラム北海道」を設立した。組織のトップを務めていた当時、公安部門からの捜査報告が一度も上がって来なかったという。

 公安警察の捜査は、犯罪を摘発する刑事とは違う。捜査と称してパソコンや携帯電話を押収し、情報収集するのが目的だ。秘密保護法は、曖昧だった情報収集活動の法的根拠になる。戦前の治安維持法に基づく特高警察の流れをくむ公安警察の隆盛が懸念される。

 市民が特定秘密とは知らずに情報開示請求した場合、犯罪行為をする個人、団体として公安警察の監視対象になり、罰則が適用される恐れがある。

 法制定の背景には二つの流れがある。一つは2001年の米中枢同時テロ以降、国際テロへの対処が問題として浮上したこと。もう一つは、スパイを直接取り締まる法律がなかったことだ。警察内部では長年待望論があった。

 国が国民を監視する社会がますます加速する。防犯カメラと称する「監視カメラ」でハード面の整備は進んでいる。国民が気付いていないだけで、システム作りは着々と進んでいる。国が暴走しないように権力をチェックし続ける必要がある。(聞き手は根石大輔)

(2014年11月16日朝刊掲載)

年別アーカイブ