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社説・コラム

天風録 「君は舟、人は水」

 沖縄の地元紙で今月、川柳欄の第1席となった句に膝を打った。<無風では波は立たぬが帆も張れぬ>。県政を帆掛け舟になぞらえ、さなかの知事選が無風でなくてよかった―という喝采とも読める▲4氏が並び立ち、基地移設をはじめとする争点で独自カラーの帆を張り合った。選びがいのほどは、投票率からうかがえよう。結果は紙面の通り、辺野古移設に断固反対の前那覇市長が推進派の現職に取って代わった▲「君は舟なり、人は水なり」という。水も時には荒れ、逆波が立って舟をひっくり返す。おごって民衆の心中を見誤るな、との警句だろう。政治の心得を説く中国・唐代の書「貞観(じょうがん)政要」にある▲民主主義の世なら、なおさらの戒めのはず。前回知事選での県外移設の公約を翻し、アメとムチの振興策にすがりついた現職には、「移設ノー」の批判が保革問わず渦巻いた。沖縄人のプライドを逆なでしたとみえる▲卒原発を問うた滋賀に続き、政権与党は知事選で2敗目。野党候補に相乗りした福島は不戦勝にすぎない。原発や基地に頼る社会の「依存症」を何とかしなければという民意は強いようだが、わが首相ははて、潮目をどう見立てているのやら。

(2014年11月17日朝刊掲載)

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