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社説・コラム

社説 沖縄県知事に翁長氏 政府は重く受け止めよ

 政府の方針にノーを突き付けたといえよう。保守分裂となった沖縄県知事選はきのう投開票され、新たな知事に前那覇市長の翁長雄志(おなが・たけし)氏が選ばれた。

 最大の争点は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設の是非だった。反対を唱えた翁長氏の当選は、県内移設は認められないとの民意にほかならない。

 政府は、今回示された沖縄の民意を重く受け止めなければならない。

 辺野古移設の推進を主張し、自民党が推薦した現職の仲井真弘多(なかいま・ひろかず)氏は、前回の知事選では県外移設を公約していた。県外移設を掲げる民主党政権の誕生をきっかけに、同調する民意が高まったからだ。

 しかし自民党への政権交代を境に仲井真氏は姿勢を再び転換し、昨年12月に辺野古沿岸部の埋め立てを承認した。かつて自民党県連の幹事長を務めた翁長氏は、この決定を公約違反だとして反発し、知事選への立候補を決めた。

 仲井真氏に裏切られた思いは、保革を超えて県民の間に広がっていた。そうした声を翁長氏がすくい取ったといえる。

 辺野古移設を進めたい安倍政権は、基地負担と引き換えに沖縄振興策に力を入れる姿勢を打ち出している。国の予算として2021年度まで毎年度、3千億円台を確保するという。

 知事選の期間中には菅義偉官房長官が現地入りし、沖縄県が目指す映画テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ」の誘致活動を政府として支援する意向を表明した。なりふり構わぬ振興策で、県民の理解を得たいという思惑だろう。

 だが選挙結果を踏まえれば、県民は経済対策よりも基地問題を重んじたと受け取れよう。ことし1月の名護市長選で、普天間飛行場の辺野古移設に反対した現職が当選した時と同じ構図である。

 県民の多くは、市街地の真ん中にある危険な普天間飛行場を固定化してはならないと考えていよう。それでも米軍基地が集中する県内に代替の基地を造ることには納得いかないという思いは十分に理解できる。

 今回の選挙戦では「自己決定権」という言葉が目に付いた。「地元のことを住民抜きで決めるな」といった自治の根本だろう。最大限、尊重されなければなるまい。

 これまで政府は選挙結果を問わず、普天間飛行場の辺野古移設を進める方針を示してきた。埋め立て工事に向けた海底調査に入っており、年明け以降には着工する構えだ。

 翁長氏の辞職に伴う那覇市長選でもきのう、移設反対の新人が制した。これほど明確になった民意を本当に無視し続けることができるだろうか。

 一方で選挙中、翁長氏は「あらゆる手段を駆使して、辺野古に新基地は造らせない」と強調したものの、具体的な道筋は提示しきれなかった。

 埋め立てを承認した手続きに不備や法的欠陥がないか、まずは検証するという。可能性は低いとみられるが、承認の取り消しや撤回につながるからだ。

 いばらの道になるのは間違いなかろう。とはいえ、民意を形にするのは県政トップの責任である。果たせるかどうか、手腕が問われる。

(2014年11月17日朝刊掲載)

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