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社説・コラム

[施行迫る特定秘密保護法] 元大蔵官僚で嘉悦大ビジネス創造学部教授・高橋洋一さん(59) 

情報公開は後退せず

 特定秘密保護法が施行されても情報公開は後退しない。後退すると主張をする人は秘密が増えると勘違いしているのではないか。重要なのは、なぜ「特定」かということ。大きな秘密という枠があり、そのうち外交や防衛などに限った部分を特定秘密と定めている。特定秘密がどれだけ広がっても秘密の一部にすぎない。まずは秘密自体の範囲を狭めるよう議論すべきだ。

 1980年に旧大蔵省に入り、郵政民営化や公務員制度改革に携わった。2008年に退官するまで、公金を運用する金融機関名など数多くの秘密に触れた。

 非公開の秘密情報は山ほどあった。国に情報開示請求をした時、重要な部分が黒塗りにされた書類が出てくる。何がなぜ秘密にされ、いつ公開されるかは国民には分からない。公開されないまま破棄されるケースもたくさん見てきた。

 逆説的になるが、特定秘密を広げたほうが国民にとってメリットが大きいといえる。なぜなら、法で秘密に指定される情報の分野や有効期間が決められるからだ。秘密は厳重に管理され、有効期間が過ぎれば公開される。少なくともこれまでのように、訳の分からないまま非公開にされていたよりは透明性が増すだろう。

 秘密保護法はいわばスパイ防止法だ。普通の国にはある法律で、本来は騒ぐような話ではない。「これまで法律なしで済ませてきたから、これからも必要ない」という人もいるだろうが、他国と情報交換するにはスパイ防止を明文化した法律は必要だ。法の施行後に問題点が浮かび上がれば直せばいい。(聞き手は根石大輔)

(2014年11月18日朝刊掲載)

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