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社説・コラム

[施行迫る特定秘密保護法] 広島県保険医協会副理事長・数野博さん(67) 

患者からの信頼壊す

 医療界には、患者の秘密を厳守する「医の倫理」がある。医師と患者の真の信頼関係があって、最良で適切な医療が提供できる。

 行政機関の長が特定秘密を扱える人物かどうかを調べる「適性評価」では、薬物の乱用や影響、精神疾患について公私の団体に必要な事項の報告を求めるとしている。医師にも情報提供を求めてくるだろう。

 しかし、患者のプライバシー情報が国に垂れ流しになるとすれば、「医者には何も言えない」となってしまう。患者の病歴や薬の服用歴、生活習慣、家族の既往歴を総合的に評価し、治療に当たる。これは必ず踏む手順であり、必要不可欠なことだ。医師と患者の信頼関係を壊すもので看過できない。

 福山市の開業医で、広島県保険医協会(広島市南区)副理事長を務める。協会加盟の全国保険医団体連合会は10月、適性評価の調査に協力しないと宣言した。

 私も一人の医師として協力しないと決めた。医師が国に提供した情報が公安目的で保持、拡大運用される懸念が拭えないからだ。患者の人権や権利、憲法をも無視した法だ。刑法には医師の守秘義務が明記してある。秘密保護法は明らかに矛盾している。

 医療界に関わる問題点はまだある。特定秘密に触れるとして、搬送された患者が口をつぐむ懸念がある。これでは適切な治療はできず、患者の不利益になる。例えば原発事故が起きたとする。国は原発関連は特定秘密に当たらないとしているが、実際は分からない。問題だらけの法律だ。(聞き手は胡子洋)

(2014年11月23日朝刊掲載)

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