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社説・コラム

社説 ’14衆院選 自民党の公約 問題の先送りが目立つ

 「アベノミクス解散」を掲げた安倍晋三首相の意向を反映しているのだろう。自民党がきのう発表した衆院選の政権公約は、景気対策を前面に出しているのが特徴だ。

 経済再生のためとして来年10月に予定していた消費税率の再増税を1年半延期する。法人減税や大胆な金融政策に引き続き取り組むとともに、住宅投資を活性化させる住宅エコポイント制度の復活も盛り込んだ。

 むろん当面の経済情勢への目配りは必要だろう。景気対策を重視する有権者が多いのも確かだ。しかし将来を見据えた根本的な問題について、多くを先送りしている印象が拭えない。

 まず先進国で最悪の水準にある財政問題である。消費税の再増税を先送りしたうえ、法人減税も行うのであれば、2020年度に基礎的財政収支を黒字化するという政府目標に影響が出るのは避けられまい。

 ところが公約は、この目標を維持するとした。来年夏までに達成に向けた具体的な計画を作るという。財政健全化のための財源をどうやって工面するというのだろう。

 財政問題は社会保障にも深く関わる。公約は子育て支援の拡充をうたうが、これも消費税の再増税分を財源に予定していたはずだ。代わりをどう捻出するかは不透明である。年金などを含めた全体の将来像も見通せない。これでは国民の不安が解消されることはあるまい。

 エネルギー問題では、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた原発の再稼働を進めると明記した。

 だが原発の割合をはじめ、将来どのような電源構成にするかについては「速やかに示す」としているだけだ。

 原発への依存には国民の抵抗感が強いだけに、衆院選での争点化は避けたいのかもしれない。だが、政権与党として、はっきり考えを示すべきだ。

 さらに首相が臨時国会で最重要課題としていた「地方創生」も、地域商品券の発行などの公約は従来の政策の延長線上にとどまっている。自由度の高い交付金の創設については自治体も期待しているようだが、制度設計はこれからだ。

 公約には地方分権改革の推進や地方の財源確保も記しているが、具体性に欠ける。地方の再生を本気で考えるのであれば、これらの議論こそもっと深めてもらいたい。

 一方、表現には気を使いながらも前のめりの姿勢が目立つのが安全保障政策である。

 「集団的自衛権」という言葉は使わず、「7月の閣議決定に基づき、切れ目のない安保法制を整備する」とした。

 沖縄県の基地問題も従来の方針を変えていない。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設を推進するとしている。今月あった県知事選で県民が示した反対の意思を全く無視していいのだろうか。

 安倍首相がこだわる憲法改正については、国民投票を実施して改正を目指す方針をあらためて示した。だが国防軍の創設などの具体的な内容は盛り込んでいない。

 公約に曖昧な部分を残したままでは、たとえ与党で過半数を獲得しても、「信を得た」とは言い切れまい。各立候補者はしっかりと補足説明すべきだ。

(2014年11月26日朝刊掲載)

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