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社説・コラム

[施行迫る特定秘密保護法] 外務省機密漏えい問題で有罪判決を受けた元毎日新聞記者・西山太吉さん(83) 

国の権力 強める手段

 特定秘密保護法が施行されれば、日本の情報公開はさらに機能しなくなる。国は情報を独占し、これまでも秘密を公開するもしないも自由自在にできた。最近の事例では、福島第1原発事故の「吉田調書」がそうだ。国の裁量が強化され、日本は秘密だらけの国になる。

 毎日新聞の記者だった1972年、沖縄返還協定に関する密約を報道した。その後、外務省の女性職員から極秘電文を入手したとして国家公務員法違反容疑で逮捕され、有罪が確定。2000年に米国で密約を裏付ける公文書が見つかり、名誉回復のため裁判を起こした。しかし国は密約の存在を認めず、裁判も敗訴が確定した。

 密約の裁判で分かったように、日本の情報公開はでたらめだ。国が「秘密がない」と言えば「ない」ことにされる。密約は米国の情報開示で初めて分かった。この問題に関して、日本では内部告発すら一度もない。

 問題なのは、なぜ国が秘密保護法を作ったかだ。法を新たに作るには、主権者である国民の権利が阻害されているなどの理由が必要だが、秘密保護法にはその理由がない。自分たちの権力を強化する手段でしかなく、民主国家で最もやってはならないことだ。

 国に情報を最大限公開させるのがメディアの仕事だ。絶えず権力を監視し、主権者である国民をバックに情報公開を迫る。それで初めて強大な権力との均衡が取れる。メディアの最大の使命は言論の自由を守ること。現在ある情報公開法を改正し、情報の開示をさらに進めるべきだ。(聞き手は根石大輔)

(2014年11月26日朝刊掲載)

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