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緊急連載 三隅の誤算 中電、関電へ供給見送り <上> 地元との溝 

「原発」とリンク 想定外

 中国電力が、火力の三隅発電所(浜田市)2号機の建設前倒しによる関西電力への供給計画を白紙に戻した。島根原子力発電所(松江市鹿島町)の再稼働との関係をめぐる矛盾を地元に指摘され、撤回に追い込まれた形。決断の背景に迫る。(樋口浩二)

 中電の供給計画が表面化した10月7日、中電幹部が慌ただしく県庁内を回っていた。県議会最大会派の自民党議員連盟の県議と小林淳一副知事たち県幹部に計画を説明するためだ。「反原発の住民感情が高まるのは必至。企業の論理は通らん」。指摘された幹部に不安の色がにじんでいた。

「自然な発想」

 中電は、火力電源の調達を図る関電の入札条件に沿って、三隅2号機の建設を早める考えだった。電力小売りの全面自由化を2016年に控え、需要の掘り起こしが課題となる中電にとっては「自然な発想」(幹部)。一方、原発稼働に理解を示す半面、住民の反発も覚悟する自民党の県議には「発想自体が信じられない」。両者に溝が生まれた。

 中電は、昨年末の島根2号機再稼働に向けた適合性審査の申請過程では、原発30キロ圏2県6市から同意を得るなど慎重な手続きを踏んだ。だが関電への供給計画が原発稼働とリンクするとの発想はなかったという。本社主導の計画に、ある県幹部は「原発地元との温度差がある。仮に原発を動かすにしても県や議会がどれだけ神経を使うのか想像力が足りなかった」という。

県側説得できず  反論を受けた後も、中電は三隅2号機の早期建設が重要と主張した。老朽火力が多い上、環境規制が強化されれば新設が制限されるリスクもあるためだ。だが県側を説得できず、最終的には応札を見送った。中電は否定するものの、県議会や県幹部には「原発稼働を優先した」との見方が大勢だ。

 電力自由化へ競争力アップも迫られる中電。検討の過程で三隅2号機の出力を40万キロワットから100万キロワットに引き上げるめどが立ったとし、将来的に域外向けの電源として活用する道も探る。

 だが、原発が立地する松江市の松浦正敬市長は、供給見送りを発表した26日「事前に十分な説明がなされるべきだった」と中電の対応を疑問視。自民議連の洲浜繁達会長も27日「説明責任に欠けていた」と指摘した。原発の早期稼働を目指す中電。電力自由化への対応との両立に課題を残した。

三隅発電所
 石炭を主な燃料とし、1号機(出力100万キロワット)は1998年に運転を開始。2号機は当初、出力40万キロワットで2004年の運転開始を目指したが、01年に07年へと延期し、その後も17年度、27年度以降と開始時期の延期を繰り返した。今回関電から落札できれば21~23年に早まっていた。

(2014年11月28日朝刊掲載)

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