×

社説・コラム

[施行迫る特定秘密保護法] 広島弁護士会会長・舩木孝和さん(58) 民主的ルール 脅かす

 特定秘密保護法は単なる法律の問題ではなく、言論の自由と知る権利の問題だ。民主主義は多数決で物事を決める。それは少数が意見を言える状態でないといけない。意見を言うには正確な情報を得られるのが前提だが、その情報に制限を付ける法律だ。国民主権や民主主義のルールの正当性に危険をもたらす。

 法の問題点は二つある。一つは秘密のまま葬り去ることができるということ。防衛や外交などの秘密は大事だからこそ、何年も秘密にしているはず。大事なものをそのまま破棄できるのは理屈に合わない。何年か後に確実に公開される制度でないといけない。

 もう一つは監視機関の第三者性が薄いこと。外国の場合は監視機関のメンバーが出身の省庁に戻れない制度が多い。行政から完全に独立した第三者機関をつくり、秘密を「もう公開していいかどうか」をチェックする体制をつくるべきだ。

 権力者が全てを決めるのは危険だ。権力者を本当に信じていいのか。政治家にそこまでの信はない。もちろん、防衛、外交の話を全て公表するわけにはいかないというのも理解できる。表現の自由と国家秘密の調和点をどこに持ってくるかだ。

 広島弁護士会は17日、保護法に反対する会長声明を発表した。12月6日には反対を呼び掛けるシンポジウムも企画している。

 秘密保護法は戦前の治安維持法と同じだ。権力者が秘密をつくり国民から反対の機会を奪う。だからシンポジウムの副題を「過ちを繰り返さぬために」とした。民主的ルールを無くさないためには、国民的な反対運動を続けることが必要だ。(聞き手は根石大輔)

(2014年11月30日朝刊掲載)

年別アーカイブ