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社説・コラム

[施行迫る特定秘密保護法] 広島弁護士会所属の弁護士・板根富規さん(62) 範囲示し恣意性防ぐ

 「何が秘密か」という基準を明確に定めた法律だ。これまでも国家公務員法や自衛隊法など公務員を規律する法律はあったが、何が秘密かは公務員の恣意(しい)的な運用に委ねられていた部分があった。本来秘密にすべきでないことが秘密にされ、そのまま開示されなかったケースもあっただろう。

 秘密保護法が不必要という意見もあるが、国家に秘密は必要だ。例えば外交。水面下で秘密裏に交渉している内容を暴露するわけにはいかない。日本の国際社会での信頼が失われる。他国との関係で守られるべき秘密はある。法が施行されれば、秘密に指定される情報の分野が決められ、秘密にすべきことが明確になる。そして秘密にしたことが正しかったかどうか検証できる。非常に大きな前進だ。

 広島弁護士会は同法案が審議中だった昨年11月、「恣意的に秘密が指定されうる」として廃案を求める会長声明を発表した。しかし板根さんは、会長声明を議論した常議員会の中で最後まで反対した。

 声明発表を求める弁護士からは、秘密の範囲が拡大解釈される恐れがあるなどの意見が上がっていた。しかし、それは「恐れがある」というだけだ。法が施行されてみないと実際はどうか分からない。

 秘密を扱う人を調査する「適性評価」や刑罰が重すぎる点など批判はあるだろう。しかし、重要なのは日本は民主主義国家ということだ。法を運用して問題があれば選挙を通じて国民が「これはおかしい」と声を上げればいい。法を改善できるのは国民の力であり、民主主義の力だ。(聞き手は根石大輔)

(2014年12月1日朝刊掲載)

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