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歴史刻む日章旗を竹原市に寄贈 大久野島毒ガス工場に勤務・大阪の伊藤さん 

 大久野島(竹原市忠海町)にあった旧日本陸軍の毒ガス製造工場で働いていた伊藤大二さん(90)=大阪府吹田市=が5日、当時の工場幹部たちからもらった日の丸の旗や、戦時中の新聞を竹原市に贈った。旗には召集された伊藤さんへの激励文が寄せ書きしてある。市は貴重な資料として展示などを考えたいとする。(山下悟史)

 旗は縦64センチ、横85センチで、中央の日の丸を囲むように「勇戦奮闘」などの文字が躍っている。山中峯次所長や林雄二工場長、毒ガス製造工室の室長たち幹部や同僚たち計15人の名前も墨で書いてある。1944年に召集された時に受け取ったという。新聞は、太平洋戦争開戦1年後の42年12月8日付など4日分。

 宇部市出身の伊藤さんは地元の工業高校を卒業。41年3月から工場で働いた。イペリットガスなどの効率的な製造法を研究し、実用化実験にも取り組んだ。45年に陸軍の幹部候補生として、東京で終戦を迎えた。

 伊藤さんは5日まで竹原市の呉共済病院忠海分院に検査入院していたため、分院で市職員に渡した。「知らなかったとはいえ多くの人を傷つけたガス製造に携わった。歴史を伝える資料として活用してほしい」と伊藤さんは願っていた。

(2014年12月6日朝刊掲載)

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